地球から満月が最も大きく見える「スーパームーン」のとき、砂浜の浸食量は50%程度増すことが、海上・港湾・航空技術研究所港湾空港技術研究所の沿岸土砂管理研究グループの研究で明らかになった。高波浪や高潮が重なった場合、より大きな浸食につながる恐れがあり、海岸管理者は新たな対策を求められる可能性がある。
月は地球の周りを楕円軌道で動いている。月と地球が最接近し、かつ満月(広義には新月も含む)の場合をスーパームーンと呼び、月が最も遠いときと比べて直径が14%大きく見える。直近では2020年4月8日だった。
スーパームーンの際に、海面水位が高くなることは昔から知られていた。引力が増して潮汐(ちょうせき)力が強まるため、通常の大潮よりも大きな干満差を生じさせる。またそれに伴って、地形に変化を生じさせることも定性的には分かっていた。ただし定量的には把握されておらず、観測結果を基に変動量を明らかにしたのは世界で初めてだという。
同研究所には茨城県の波崎海岸で24年間、海浜の地形変化を観測し続けてきたデータがあった。毎日観測を続けている例は世界的に見ても珍しいという。
通常の潮間帯の最上部地点を解析した結果、過去のスーパームーン時に海岸線が1日当たり平均0.47m後退していることが明らかになった。同様の波浪条件で考えると、通常時よりもスーパームーンの際は約50%多く浸食している計算になる。
なぜスーパームーンで浸食しやすくなるのか。研究を主導した沿岸土砂管理研究グループの伴野雅之主任研究官は、次のように仮説を述べる。「スーパームーンで海面の潮位が通常よりも上昇し、つられて地下水位も上がる。干潮時に潮位が下がっても、地下水位の挙動は遅く高いままだ。その結果、砂浜には水が染み込んでおり、波の作用で削り取られる」