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 国土交通省は、鉄道建設・運輸施設整備支援機構の理事長の公募を開始した。募集期間は2021年1月19日から2月15日まで。機構が建設を担う北陸新幹線金沢―敦賀間の開業が計画の22年度末から遅れる問題で、北村隆志前理事長が引責辞任したのを受けた措置だ。後任を公募で決め、組織の立て直しを図る。

北陸新幹線の敦賀駅の完成イメージ(資料:鉄道建設・運輸施設整備支援機構)
北陸新幹線の敦賀駅の完成イメージ(資料:鉄道建設・運輸施設整備支援機構)
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 国交省は20年11月11日、北陸新幹線の開業が計画よりも1年半ほど遅れ、総事業費が2880億円程度増える見通しを公表。与党や沿線自治体などから激しい反発を受けた。

 そこで、有識者から成る検証委員会を立ち上げ、工期短縮などを検討。12月10日に公表した中間報告書で、施工方法の見直しなどで開業の遅れを1年程度に縮め、総事業費を220億円ほど圧縮できる見通しを示した。

 12月22日には、鉄道・運輸機構に対して、独立行政法人通則法に基づく業務改善命令を出した。工事を担当する大阪支社が甘い見通しを伝え続けてきたために、本社や国交省の対応が遅れたと判断。石川県や福井県といった建設現場に近い場所に司令塔となる組織を配置し、外部有識者の助言を受け入れるなどチェック体制を強化するよう命じた。

 鉄道・運輸機構が国交省から業務改善命令を受けるのは、03年の設立以来初めてだ。改善命令の同日に、当時理事長の北村氏が辞意を表明。3日後の12月25日に、機構が北村氏と副理事長の小島滋氏の退任(21年1月5日付)を発表した。

業務改善命令の内容。着色は日経クロステック(資料:国土交通省)
業務改善命令の内容。着色は日経クロステック(資料:国土交通省)
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 国交省は鉄道・運輸機構への業務改善命令と併せ、同省の前鉄道局長で20年7月に官房長に就任した水嶋智氏を21年1月6日付で機構の副理事長に出向させる異例の人事を発表。機構の組織改革を進める姿勢を鮮明にした。

 ただ、北陸新幹線の開業遅れの可能性が強まったのは、水嶋氏が国交省の鉄道局長を務めていた19年10月だ。新設する敦賀駅の土木工事を受注したJVが、遅れている工程の挽回は困難だと、鉄道・運輸機構の大阪支社に申し出た。

 それでも、大阪支社は本社に対し、開業に間に合うと報告。同年12月にJVと契約を変更し、工期を20年7月から22年2月に延長したが、本社には大幅な工程遅延について触れず、信通機器室の追加工事のためだと説明した。

北陸新幹線の工程遅延と事業費増額の経緯(資料:国土交通省)
北陸新幹線の工程遅延と事業費増額の経緯(資料:国土交通省)
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 結局、鉄道・運輸機構が国交省鉄道局に北陸新幹線の開業が遅れる見通しだと伝えたのは、水嶋氏が官房長に就任した20年7月だった。同月には、国交省で鉄道局長を務めた藤田耕三事務次官が退任した。藤田氏が鉄道局長に就いていた15年1月には、政府・与党の申し合わせで開業の3年前倒しを決定している。