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 国立環境研究所と東京大学、米ミシガン州立大学は、世界で稼働している既存の大型ダムに100年確率の洪水に遭う人口を最大で約20%減らす効果があると明らかにした。2021年1月18日付で、英ネイチャー・コミュニケーションズに掲載した。

■ダムの効果で洪水被害に遭う人口は減らせる
■ダムの効果で洪水被害に遭う人口は減らせる
100年に1度レベルの洪水が発生したときに、浸水域に居住する人口の総和の推移。産業革命前と比較した21世紀末時点の地球の平均気温上昇を約2度と予測するRCP2.6シナリオでも、約3度と予測するRCP6.0シナリオでも、「ダムあり」は「ダムなし」を下回る(資料:国立環境研究所)
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 洪水の発生源になり得る主要河川の多くにはダムが整備されている。洪水の抑制に一定の効果をもたらしている。地球温暖化など気候変動で河川の流量が増加してもその効果は期待できる。ただし、これまで気候変動の研究で洪水リスクの推定にダムの効果が見込まれることはなかったという。「研究対象があくまで自然現象で、防災や減災の視点は含まれていなかったためだ」(国立環境研究所気候変動影響評価研究室の花崎直太室長)

 花崎室長らの研究チームは、05年までに造られた世界に963基ある集水面積5000km2以上のダムの洪水調節機能を踏まえて、100年に1度レベルの洪水が発生した際のダム下流の浸水域に居住する「洪水暴露人口」を推計した。

 ダムの効果を踏まえた06~99年の洪水暴露人口は、RCP2.6シナリオでは年平均で約720万人、RCP6.0では約1340万人だった。RCPシナリオとは複数のパターンで設定した温暖化ガスの濃度に基づく気候変動の予測結果だ。温暖化対策の効果を高めに見積もり、産業革命前と比較した21世紀末時点の地球の平均気温上昇を約2度に抑えると予測したRCP2.6や、対策の効果を限定的とみて約3度と予測したRCP6.0などがある。

 ダムの効果を反映していないシミュレーションと比較すると、洪水暴露人口はRCP2.6で16.3%、RCP6.0で12.8%減る推計だ。21世紀後半の70~99年に限ると、RCP2.6では20.6%減、RCP6.0では12.9%減になった。