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 リニア中央新幹線静岡工区の未着工問題などを議論した2021年2月10日の衆院予算委員会で、赤羽一嘉国土交通相は、同省が大井川の管理権限を静岡県から召し上げる可能性を「ばかげたこと」と一蹴した。管理権限の移管は、国交省が事態を打開する秘策として一部で取り沙汰されていた。

 この大臣発言で、同工区を巡るJR東海と静岡県の対立は、県に有利な状況になってきた。21年6月に予定されている県知事選で、JR東海に批判的な現職の川勝平太氏が再選するか、その後継者が当選すれば、リニア事業の膠着状態がさらに長引く可能性がある。

リニア中央新幹線は静岡県北部の山岳地帯を通る計画だ。同県内の延長約11kmのうち、南アルプストンネルを建設する静岡工区は約9km。トンネルが大井川上流部の直下を通るため、国から管理の委任を受けている静岡県が着工を認めなければ、JR東海が工事を進めるのは難しい。JR東海の資料などを基に日経コンストラクションが作成
リニア中央新幹線は静岡県北部の山岳地帯を通る計画だ。同県内の延長約11kmのうち、南アルプストンネルを建設する静岡工区は約9km。トンネルが大井川上流部の直下を通るため、国から管理の委任を受けている静岡県が着工を認めなければ、JR東海が工事を進めるのは難しい。JR東海の資料などを基に日経コンストラクションが作成
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 1級河川の大井川は本来、国交省が管理する。しかし河川法では、国交省が1級河川の一定区間の管理を自治体に委任できると規定している。国交省はこの規定に基づき、大井川の上流部の管理を静岡県に委任している。

 トンネル工事に伴う大井川の流量減少などを懸念する静岡県は、この管理権限を盾に県内の着工を認めてこなかった。そこで、リニア事業の推進者側では、国交省が県から大井川上流部の管理権限を取り上げる秘策がささやかれてきた。

 国交省が静岡県から大井川上流部の管理権限を取り戻した上で、同省がJR東海にトンネル工事への着手を認めるという筋書きだ。これが実現すれば、県ははしごを外され、JR東海への対抗力が弱まる。県にとっては避けたいシナリオだった。