政府は、風力や太陽光などの発電事業者と地域住民との紛争を防ぎ、再生可能エネルギーの普及を促す新たな仕組みを導入する。
新制度では、自治体が再エネ事業を促進する区域を温暖化対策の実行計画に定め、地域の課題を「見える化」する。促進区域で地域活性化につながる発電事業を行う場合、環境影響評価(アセスメント)の手続きの一部を省略する。
2021年3月初旬の閣議決定を目指す地球温暖化対策推進法(温対法)の改正案に、新制度を盛り込む方針だ。
政府は50年までに国内の温暖化ガスの排出量を実質ゼロにする目標を掲げている。しかし、再エネ施設の建設を巡って、地域の環境や景観、防災への影響を懸念する地元住民と事業者とのトラブルが頻発。普及を阻む大きな要因となっている。
そこで環境省は、再エネ事業を巡る地域紛争を未然に防ぐ新たな仕組みを温対法の改正案に盛り込む。市町村が国や都道府県、地域住民らと連携して実行計画を作成し、再エネ事業の促進区域を設定。併せて、周辺環境や地域社会への配慮事項を同計画に明示する。
一方で、地元企業への売電など地域貢献策を盛り込んだ促進区域内の再エネ事業には、許認可手続きのワンストップ化や環境アセスメント手続きの一部省略などの特例を認める。地域貢献に対する事業者の意欲を高め、地域活性化の取り組みを支援する。
例えば、市町村が地域に貢献すると認定した促進区域内の「地域脱炭素化促進事業」では、地域の合意形成や周辺環境への配慮ができていると見なし、環境アセスメントの第1段階に当たる「配慮書」の審査を省略する。配慮書の審査には通常3カ月ほど要する。地域の合意形成などの準備期間を含めると、数年かかるといわれるアセスメント期間の大幅な短縮が見込める。