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 阪神高速大和川線のたて坑工事を巡り、設計ミスで工事費が増大したとして、発注者の大阪府が設計者の日本シビックコンサルタント(東京・荒川)に約61億9000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が2021年3月26日、大阪地裁であった。裁判所は、府の損害額を約9億7000万円と算定したうえで、発注者と設計者の双方に過失があると認定。日本シビックには、たて坑の安定性について府への説明義務を怠ったとして、約2億2000万円の損害賠償を命じた。

阪神高速大和川線で訴訟の対象となった開削区間の施工時の様子(写真:大阪府)
阪神高速大和川線で訴訟の対象となった開削区間の施工時の様子(写真:大阪府)
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 工事費が増大したのは、大阪府が整備を進めていた大和川線のうち、常磐東ランプと本線が合流する区間だ。シールド機の発進・到達基地となるたて坑2カ所をニューマチックケーソン工法で構築した後、たて坑に挟まれた延長200mの区間を開削した。

 日本シビックは、本線シールドトンネルやたて坑などの詳細設計を06年12月に、府から約2800万円で受注。開削区間の詳細設計は別の会社が担当した。

問題となった現場の平面図。大阪府と日本シビックコンサルタントの資料を基に日経コンストラクションが作成
問題となった現場の平面図。大阪府と日本シビックコンサルタントの資料を基に日経コンストラクションが作成
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 開削区間を掘削している途中で、たて坑の安定性に問題があると判明。府は12年8月に掘削工事を一時休止した。たて坑の片側で掘削を進めると、反対側の土圧や水圧によって滑動・転倒する恐れがあったためだ。

 府は、2つのたて坑の間に鉄筋コンクリート造の仮設スラブを設け、互いに支え合うようにするなど対策工事を追加。約242億円だった工事費は約340億円に膨れ上がった。

問題となった現場の縦断図。形状を単純化し、切り梁や腹起こしなどを省略している。図中の企業名は、詳細設計の受注者。たて坑が滑動・転倒する恐れがあるとして開削工事を中断した。取材を基に日経コンストラクションが作成
問題となった現場の縦断図。形状を単純化し、切り梁や腹起こしなどを省略している。図中の企業名は、詳細設計の受注者。たて坑が滑動・転倒する恐れがあるとして開削工事を中断した。取材を基に日経コンストラクションが作成
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安定対策の概要。対策工事の追加によって、工事費が当初の約242億円から約340億円に膨れ上がった。取材を基に日経コンストラクションが作成
安定対策の概要。対策工事の追加によって、工事費が当初の約242億円から約340億円に膨れ上がった。取材を基に日経コンストラクションが作成
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 設計者には、開削区間を掘削しても自立するたて坑を設計する義務があったとして、府は設計ミスだと主張。併せて、たて坑の側面を掘削すると、たて坑が滑動・転倒する恐れがあることを府に指摘する義務があったと訴えた。

 安定性の問題について事前に指摘があれば、2つのたて坑の間を開削せずに全てケーソンで構築する「連続ケーソン工法」を採用していたはずだと想定。連続ケーソン工法の場合の工事費約278億円と、対策の追加で増大した工事費約340億円との差額を府の損害額と見なし、それに遅延損害金を加えた額を日本シビックに請求した。

仮設スラブ設置などの対策で、工事費を約284億円と算定していたが、工法の変更が必要となってさらに増大した。取材を基に日経コンストラクションが作成
仮設スラブ設置などの対策で、工事費を約284億円と算定していたが、工法の変更が必要となってさらに増大した。取材を基に日経コンストラクションが作成
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