戸田建設など6社は、2019年4月に施行された「再エネ海域利用法」に基づく初の洋上風力発電事業者に決まった。同法初の発電設備整備促進区域である長崎県五島市沖で、浮体式の洋上風力発電機8基を建設し、総出力1.68万kW(16.8MW)の発電事業に取り組む。
経済産業省と国土交通省が実施した事業者の公募に、戸田建設がENEOSや大阪ガス、INPEX、関西電力、中部電力とコンソーシアム(企業連合)を組んで参加した。6社は今後、合同会社を設立。国による固定価格買い取り制度(FIT)の認定と対象海域の占用許可を受けた後、事業に本格着手する。
戸田建設は長年、五島市沖で浮体式洋上風力発電の実証実験などを続けている。近年は、周辺の一般海域で商用運転を目指し、環境影響評価(アセスメント)を進めてきた。再生可能エネルギー事業者は通常、発電設備の建設を始める前に、環境アセスメントを4~5年ほどかけて実施する。戸田建設は既に、浮体式洋上風力発電の環境アセスを終えているため、国から対象海域の占用許可を受けた後、比較的早く建設に着手できるとみられる。
再エネ海域利用法は、一般海域での洋上浮力発電の促進を目的に制定された。国が選定した事業者に最大30年間の占用を認める。従来、一般海域で事業を行う場合、国有財産法に基づく都道府県条例の占用許可を得る必要があった。しかし、その占用期間は3~5年と短いため、企業の資金調達が困難だった。新法では長期占用によって事業の予見性を高め、企業が洋上風力発電に取り組みやすい環境を整えた。
再エネ海域利用法のスキームは、おおむね以下の通りだ。国が洋上風力発電に適した一般海域を「促進区域」に指定し、地元の自治体や漁協などでつくる協議会の議論を経た後、事業者を公募する。事業者の選定では、有識者から成る第三者委員会や都道府県知事の意見を踏まえ、応募者が提出した公募占用計画を評価。供給価格と事業実現性にそれぞれ120点ずつ配分し、計240点満点で採点する。
五島市沖の洋上風力発電は、再エネ海域利用法の初案件として、20年6月に事業者の公募を開始。21年6月11日に選定結果を公表した。唯一応募した戸田建設などのコンソーシアムは、供給価格120点、事業実現性87点の計207点の評価を得て、事業者に決まった。