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 内閣府や東京都などは、首都圏で大規模な水害発生が予想される場合に遠方へ避難する「広域避難」の対象者を従来よりも7割少ない約74万人とする考えを打ち出した。2019年の台風19号で、自治体が遠方に避難施設を十分に確保できない状況が明らかになった。住民に自ら避難先を用意するよう促す。21年6月17日に開いた国や都などでつくる検討会で対応方針を示した。

2019年10月の台風19号は首都圏に広範な被害をもたらした。写真は東京都西部を流れる多摩川の台風接近時の様子。手前は二子玉川駅と二子橋(写真:読者提供)
2019年10月の台風19号は首都圏に広範な被害をもたらした。写真は東京都西部を流れる多摩川の台風接近時の様子。手前は二子玉川駅と二子橋(写真:読者提供)
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 検討会は従来、東京都東部を流れる荒川や江戸川の氾濫で浸水被害を受ける恐れのある流域住民ら約255万人を広域避難の対象に想定。大規模な水害の発生が予想される際には、沿川の自治体などが遠方に用意する避難所に対象者を収容する方向で検討を進めてきた。

 しかし台風19号では、荒川や江戸川から遠く離れた都西部の多摩地域の他、千葉や埼玉など隣県でも被害が発生した。検討会では、大規模な水害は主に都東部の区部で起こると予想。区部から多摩地域や隣県への避難を想定していた。台風19号では、そうした自治体でも、地元住民の避難所の確保に追われ、他の自治体から避難者を受け入れる余裕はなかった。

 さらに台風19号では、検討会の想定よりも早いタイミングで、都内の鉄道が計画運休を実施。遠方に避難するために必要な移動の手段や時間を十分に確保できない恐れがあると分かった。

 そこで検討会は、沿川の自治体などが遠方に用意する避難所で膨大な数の住民を全て収容するのは困難だと判断。特定の地域や自治体を安全な避難先として事前に示すのも難しく、鉄道の計画運休などを考慮すれば、遠方への避難は現実的ではないと結論づけた。

 検討会ではこれまでも、沿川の自治体から「250万人全ての立ち退き避難は現実性に乏しい」といった声が上がっていた。広域避難の対象として新たに算定した約74万人という規模でも、多すぎるとみる向きはある。

 避難者の受け入れ先として想定される隣県からは、「都に隣接する複数の市はどこも、新型コロナウイルスの問題も含めて避難所の確保に難儀をしている。大変厳しい状況にあるのは引き続き変わりない」といった意見が出ている。