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 2021年6月、千葉県八街市で児童が死傷する痛ましい交通事故が発生した。小さな命が車の犠牲となる事故事例は枚挙にいとまがない。19年には大津市で園児2人が死亡、保育士を含む14人が重軽傷を負った事故が発生。12年には京都府亀岡市で登校中の児童ら10人が死傷したケースがある。通学路をはじめ、身近な道路での悲惨な交通事故が繰り返されているのだ。

 先進7カ国(G7)の中で、日本は生活道路における事故リスクが高い国だ。人口10万人当たりの歩行中・自転車乗用中の交通事故による死者数は米国に次いで多い。国内においては、幹線道路での交通事故件数は急速に減少しているものの、生活道路での事故件数の減少速度は鈍い。

人口10万人当たりの交通事故での死者数を先進7カ国(G7)間で比べた。日本は自動車乗車中の死者数はG7で最も少ないものの、歩行中・自転車乗用中の死者数は多い。世界銀行によるIRTAD(2019)の情報を基に国土交通省が作成
人口10万人当たりの交通事故での死者数を先進7カ国(G7)間で比べた。日本は自動車乗車中の死者数はG7で最も少ないものの、歩行中・自転車乗用中の死者数は多い。世界銀行によるIRTAD(2019)の情報を基に国土交通省が作成
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道路の種類別に見た交通事故件数の推移。幹線道路に比べて、生活道路での事故の減少スピードが鈍い(資料:交通事故統計年報を基に国土交通省が作成)
道路の種類別に見た交通事故件数の推移。幹線道路に比べて、生活道路での事故の減少スピードが鈍い(資料:交通事故統計年報を基に国土交通省が作成)
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 生活道路の安全対策に詳しい埼玉大学大学院の久保田尚教授は、次のように指摘する。「交通事故による死者が発生した事例の約半数は、歩行中や自転車乗用中のものだ。そのうち約半数が自宅から500m以内で事故に遭遇している」

 さらに、生活道路における人口当たりの事故件数を見ると、死傷事故では小学生や75歳以上の高齢者が多い。子どもや高齢者が事故に遭遇しやすいのだ。

 生活道路での事故が後を絶たないのはなぜか。一因は日本の生活道路の狭さにある。古くから馬車での交通が多く、歩道を設けるのが一般的だった欧米各国とは、そもそも生活道路の構造が違う。狭い道路はただでさえ人と車が接触しやすく、逃げ場がない。制限速度を超えたスピードで車が突っ込んでくれば、痛ましい事故につながりかねない。