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 鹿島は砂防堰堤(えんてい)の本体構造の一部となる複数のプレキャストコンクリート(PCa)ブロックを、自動で据え付ける技術を開発した。操縦機構や吊り上げ装置を取り付けた汎用のバックホーが、ブロックに貼ったAR(拡張現実)マーカーをカメラで認識してブロックを自動で積む。砂防堰堤の工事を発注した国土交通省近畿地方整備局紀伊山系砂防事務所によると、災害復旧工事での自動化技術は初だ。

ダンプトラックが運んできたブロックを、バックホーに装備したカメラで認識して自動で設置する(写真:鹿島)
ダンプトラックが運んできたブロックを、バックホーに装備したカメラで認識して自動で設置する(写真:鹿島)
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 自動化技術は奈良県五條市大塔町赤谷地区で建設中の「3号砂防堰堤」で実証している。堰堤の高さは14.5m、幅は125m。PCaブロックを堰堤下流側の残存型枠として使う。上流側には土砂を積んだ土砂型枠を設置し、その間に内部材のソイルセメントを充填して本体を構築する。

砂防堰堤前面にPCaブロック871個を積み上げる(資料:国土交通省近畿地方整備局紀伊山系砂防事務所)
砂防堰堤前面にPCaブロック871個を積み上げる(資料:国土交通省近畿地方整備局紀伊山系砂防事務所)
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 赤谷地区では11年の紀伊半島大水害がもたらした集中豪雨によって大規模な深層崩壊が発生し、その後も複数回の崩落が起こっている。出水期の6~10月は作業者が現場に立ち入れないため、鹿島は建機の遠隔操縦を採用。ソイルセメントの施工には、過去にダム建設で導入実績のあるブルドーザーや振動ローラーの自動化施工技術を取り入れている。

6~10月は出水期に当たるため作業者が現場に立ち入れない(資料:国土交通省近畿地方整備局紀伊山系砂防事務所)
6~10月は出水期に当たるため作業者が現場に立ち入れない(資料:国土交通省近畿地方整備局紀伊山系砂防事務所)
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 今回新たに自動化したのは、871個のPCaブロックを11段積み上げる作業だ。遠隔で操縦するオペレーターにとって、負担の大きさが課題となっていた。特にブロックを持ち上げて精度良く設置するのが難しい。遠隔地で操作してから建機が作動するまでにどうしても遅延が生じるため、ブロック同士の衝突を避けるなど高い集中力が要求されるのだ。

 自動化の開発に携わった鹿島機械部生産機械技術グループの青野隆担当部長は「長時間の作業はミスにつながる恐れがあり、作業が一部の熟練者に限られがちだった」と話す。ブロックの積み上げが遅れるとソイルセメントの施工も先送りになるため、施工の安定性を確保する必要があった。