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 長崎県は、40年以上前に事業採択された石木ダムの建設を巡り、反対住民との折り合いがつかないまま、本体工事に着手した。2021年9月8日、本体工事の第1弾となるダム頂部の掘削工事を開始。同月末に迎える掘削工事の工期に向け、作業を進めている。

 現場周辺では、水没予定地からの立ち退きを拒む13世帯の住民が座り込みをしている。このまま現地で抗議活動が続けば、県が家屋を強制的に撤去する行政代執行に踏み切る可能性がある。中村法道知事は、在職中に行政代執行の方向性を示したい考え。任期が半年後に迫る中、中村知事の判断が注目される。

長崎県がホームページで「工事妨害状況」と紹介している建設現場写真。2021年4月末時点(写真:長崎県)
長崎県がホームページで「工事妨害状況」と紹介している建設現場写真。2021年4月末時点(写真:長崎県)
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 石木ダムは、佐世保市に隣接する川棚町を流れる2級河川・川棚川の支流の石木川に建設する多目的ダム。川棚川流域の洪水被害の軽減と佐世保市への水道水の供給などを目的に、有効貯水容量518万m3の重力式コンクリートダムを造る。国が1975年度に建設事業を採択し、2013年度に土地収用法に基づく事業認定を告示した。

 水没予定地の住民の一部は当初から反対運動を展開。県が現地の測量を強行するなど、両者の対立が激化した。住民は現地で抗議活動を続ける一方、法廷闘争も繰り広げた。15年に、国の事業認定の取り消しを求めて長崎地裁に提訴。17年に、工事の差し止めを求める訴訟を長崎地裁佐世保支部に起こした。

 ただ法廷闘争では、住民の劣勢が続いている。事業認定取り消し訴訟では、一審・二審判決とも住民が敗訴。20年10月には、最高裁が住民の上告を棄却した。工事差し止め訴訟でも、20年3月に長崎地裁佐世保支部が住民の訴えを退けている。

 こうした中、県は20年度に初めてダムの本体工事費を予算に計上。20年12月に、今回着手した掘削工事の契約を佐世保市の建設会社と締結した。しかし、現地で住民の抗議活動が続く中、現場での作業を見合わせた。20年度内としていた工期を21年6月末に3カ月延長し、さらに9月末へと再延長した。