京都市は、寺社や町家など歴史的建造物が多く残る地域で進めてきた道路の無電柱化を中断する。財政再生団体への転落の恐れがある危機的な財政状況を受け、2021年度から3年間、予算の計上を見送る。観光都市の長年にわたる看板政策も、深刻な財政難で事業選別のふるいにかけられた。
市が無電柱化に着手したのは、35年前の1986年度。当初は、防災機能の向上を目的に幹線道路で事業を展開してきた。95年度に、景観保全や観光振興を目的として伝統的建造物群保存地区や世界文化遺産周辺地域などの道路に対象を拡大。以降、そうした「景観系」の路線の無電柱化に力を入れるようになった。これまでに整備を終えた景観系は35路線(総延長9.62km)。投じた事業費は総額80億円を超える。
2018年度には、今後10年程度の無電柱化の実施計画を作成。対象は34路線(道路延長計15.38km)で、そのうち景観系として24路線(同9.97km)を列挙した。今回、23年度までの予算の計上を見送るのは、景観系の中で、地元の合意形成が整うなど、事業に早期に着手できると判断した路線だ。
具体的には、銀閣寺宇多野線(左京区、道路延長200m)、清水通(東山区、同400m)、八坂通(東山区、460m)、三条通(中京区、同960m)、新橋通(東山区、同200m)、室町十径6号線(上京区、同160m)の6路線。