會澤高圧コンクリート(北海道苫小牧市)は、プレキャストコンクリート(PCa)のパネルで既設の陸上風力発電タワーを大型化し、発電効率を4倍強に高める工法「VT」を開発した。高さ80m級の鋼製タワーを120m級にかさ上げできる。風を受ける羽根(ブレード)を大型化し、発電コストを約半分に抑える。福島県浪江町と連携して実証機を建設し、性能を確かめる予定だ。
同社によると、陸上の風力発電施設は高さ80m級の鋼製タワーが主流。今後、適用から20年が経過して電力の固定価格買取制度(FIT)の期間が満了すると売電価格が下がるため、発電効率を高めるニーズが増加する見込みだ。効率化にはタワーの大型化が有効なものの、巨大な鋼製タワーは輸送や設置が難しい。
そこで、運搬が容易なPCaパネルで既存の鋼製タワーをかさ上げするVTを開発した。使用するPCaパネル1枚の幅は2.8~4.6mで、高さは2.5m。標準部の板厚は25~50cmだ。
それを積み上げ、隣り合うパネルを抜いた“歯抜け”の格子状のPCaタワーとして組み立てる。軽量化によって、地震で作用する水平力の低減を図るためだ。PCaタワーの断面には、円すい形と比べて型枠の数を減らせるように八角形を採用した。
PCaパネル同士の連結にはプレストレストコンクリート(PC)鋼棒を使う。八角形の断面の各頂点でパネル同士を高さ方向に緊張する。
続いてPCaタワーの内側に、被覆したPCケーブルを16本配置。1本当たり約8600kNの緊張力を導入する。その後、既設の鋼製タワーを吊り上げ、PCaタワーの先端に連結すれば完成だ。