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 30人近くが犠牲となった静岡県熱海市の土石流災害で、県と市は10年以上前から盛り土の崩落の危険性を認識しながら、抜本的な対策を講じてこなかった。5年前には、盛り土の造成に関わった会社の関係者から「崩落は時間の問題」との指摘も受けていた。県が2021年10月18日に公表した行政文書で明らかになった。

静岡県と熱海市が2009年11月に開いた会合で、盛り土の危険性が指摘された(写真:熱海市)
静岡県と熱海市が2009年11月に開いた会合で、盛り土の危険性が指摘された(写真:熱海市)
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 21年7月に発生した熱海市の土石流では、不適切な盛り土が被害を拡大させたといわれる。06年9月に土地を取得した神奈川県小田原市の不動産管理会社(清算)は07年3月、県土採取等規制条例に基づき、土量約3万6000m3、高さ15mの盛り土を造成する計画を市に提出した。しかし、実際の土量は約7万m3、高さは最大約50mに上っていた。

 現場への土砂の搬入が本格化したのは09年4月ごろ。6月ごろから付近の川の下流から港にかけて泥水が大量に流出した。その後も土砂の搬入が続いたため、県と市は合同の対策会議を設け、対応を協議した。

 09年11月の会合では、「転圧しないで、ただ盛っただけの状態だ。これ以上盛り土させるのは危険」「大雨が降ると斜面に亀裂が生じ、崩壊してもおかしくない」「災害が発生すると行政が責任を問われる」「届け出内容を履行していないなら(工事を)停止できる」など、緊迫した議論が交わされた。

 12月の会合でも、「沈砂池や土堰堤など防災工事ができなければ、工事を止める。土をこれ以上入れさせない」「最悪のことを考えて、行政代執行、市がやる場合の見積もりを用意した方がいいのではないか」といった意見が出た。

静岡県と熱海市が2009年11月に開いた会合の記録の一部。会合には、県から熱海土木事務所の所長や技監、都市計画課や用地管理課、工事課に加え、東部農林事務所の治山課が出席。熱海市からは産業振興室、農林水産室、まちづくり課、土地利用対策室、建設課が参加した(資料:静岡県)
静岡県と熱海市が2009年11月に開いた会合の記録の一部。会合には、県から熱海土木事務所の所長や技監、都市計画課や用地管理課、工事課に加え、東部農林事務所の治山課が出席。熱海市からは産業振興室、農林水産室、まちづくり課、土地利用対策室、建設課が参加した(資料:静岡県)
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