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 公共事業の予算配分を巡り、自治体がソフト対策に注力する程度によって国の財政支援に差をつけるべきだとする議論が浮上している。自治体が法定の避難計画の作成などを怠れば、国の補助金支給の優先順位を低くする方策も視野に入れる。財務省の財政制度等審議会の建議(意見書)で明らかになった。

財政制度等審議会の2022年度予算編成に向けた建議の一部。21年12月3日に鈴木俊一財務相に提出した(資料:財務省)
財政制度等審議会の2022年度予算編成に向けた建議の一部。21年12月3日に鈴木俊一財務相に提出した(資料:財務省)
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 財政審は2021年12月3日、22年度予算編成に関する建議を鈴木俊一財務相に提出した。建議では「量から質への転換のさらなる進展に向けては、これまで以上にソフト対策とハード対策を一体のものとして効果を最大化させることは絶対条件だ」と強調。その一環として、防災・減災事業のソフト対策の強化を挙げた。例えば、土砂災害防止法や水防法で定める避難確保計画の作成だ。

 17年6月に施行した両改正法は、土砂災害警戒区域や浸水想定区域に立地する学校や病院など要配慮者利用施設の所有者らに、利用者の避難誘導や防災教育などを定めた避難確保計画の作成と同計画に基づく避難訓練の実施を義務付けた。

 市町村は、地域防災計画に位置付けた要配慮者利用施設の所有者らが避難確保計画を作成していない場合には、期限を決めて作成を指示。所有者らが従わなければ、その旨を公表できると規定している。

 市町村が地域防災計画に位置付けた要配慮者利用施設のうち、土砂災害防止法に基づく避難確保計画を作成した施設の割合は、21年3月末時点で65.8%。水防法の計画では66.1%だ。避難訓練を実施した施設に至っては、それぞれ27.5%、25.8%と3割に満たない。

 財政審は、平時の避難訓練が災害時の安全確保につながるとみて、法律上の義務である避難確保計画の作成などの確実な実施が重要だと指摘。「対策を行っていない地域に対してハード整備などにおける優先順位を低くするといったディスインセンティブの設定も選択肢に入れることを考える必要がある」と提言した。

土砂災害防止法と水防法に基づく要配慮者利用施設の避難確保計画の作成状況と、同計画に基づく避難訓練の実施状況。2021年3月末時点(資料:財務省)
土砂災害防止法と水防法に基づく要配慮者利用施設の避難確保計画の作成状況と、同計画に基づく避難訓練の実施状況。2021年3月末時点(資料:財務省)
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