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 自治体のインフラ整備に対する国の関与が強まってきた。自治体がある程度自由に使える交付金から、国が使途を限定する補助金へと、国の財政支援の転換を迫る動きが相次いでいる。

 背景には、自治体の政策遂行能力に対する国の根深い不信がある。無駄な公共事業を生む元凶として廃止・縮小を進めてきた国の補助金改革は転機を迎えている。

政府の行政改革推進会議は、2021年12月9日の会合で、治水事業などに対する国の財政支援の見直しを指摘した(写真:首相官邸)
政府の行政改革推進会議は、2021年12月9日の会合で、治水事業などに対する国の財政支援の見直しを指摘した(写真:首相官邸)
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 岸田文雄首相を議長とする政府の行政改革推進会議は2021年12月9日、自治体の防災・減災事業などに対する国の財政支援について、従来の交付金から補助金への切り替えを含めて制度の在り方を検討すべきだと指摘した。対象は、国土交通省と農林水産省が所管する国土強靱化政策に絡む4つの交付金事業だ。

 国交省分は、治水事業の事前防災・減災対策の他、河川・海岸・港湾施設の老朽化対策、下水道事業の内水浸水対策と脱炭素化対策の3つ。治水事業と老朽化対策では防災・安全交付金を、下水道事業では防災・安全交付金と社会資本整備総合交付金をそれぞれ利用する。農水省分は、農山漁村地域整備交付金を使う海岸保全施設の老朽化対策だ。

 いずれも集中的・計画的な事業の遂行を支援見直しの理由に挙げている。例えば国交省の治水事業では、「自治体が自由に使える交付金制度の下では、取り組みを集中的・計画的に推進することが難しく、事前の計画に基づく事業の優先順位付けに沿った資金配分が必ずしも担保されていない」とみる。

 国交省と農水省の老朽化対策でも、「老朽化対策への支援は重点的に行う必要があるところ、現在の交付金による支援では、配分時に行った優先順位付けに沿った事業への資金配分が必ずしも担保されていない」と述べている。

 財務省の財政制度等審議会も、21年12月3日に鈴木俊一財務相に提出した22年度予算編成に関する建議(意見書)で、交付金による支援の問題に言及。河川・海岸・港湾の老朽化対策について、次のように記している。

 「交付金においては、維持管理よりも住民の目にも分かりやすい新規整備が優先され、適切な資金配分が行われない可能性がある。集中的・計画的な老朽化対策を進められるような支援制度を検討すべきだ」

 さらに建議の参考資料では、交付金の特徴として「計画内の他事業への流用や計画間の流用が可能」と紹介。ある市が交付金の配分時に堤防の老朽化対策に100、水門の防災対策(改築)に50の割合で計画しておきながら、実際には前者に70、後者に80と配分して両者の大小を逆転させている例を掲載している。

 その上で、「交付金から個別補助化した場合、配分時に想定していた事業の実施が担保され、より集中的・計画的な対応が可能となる」と説明している。

財務省の財政制度等審議会は2022年度予算編成に関する建議で、交付金による財政支援の問題を指摘した。建議は21年12月3日に鈴木俊一財務相に提出された(資料:財務省)
財務省の財政制度等審議会は2022年度予算編成に関する建議で、交付金による財政支援の問題を指摘した。建議は21年12月3日に鈴木俊一財務相に提出された(資料:財務省)
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