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 土砂の埋め立てを規制する条例を持つ41自治体で、法令や条例に反する不適切な建設残土の埋め立てが2015年度以降に120件見つかった。そのうち、約4割に当たる45件で土砂流出などの被害が生じていた。総務省行政評価局が2021年12月20日に公表した「建設残土対策に関する実態調査」で明らかになった。

 21年7月に発生した静岡県熱海市の土石流では、26人が死亡、1人が行方不明となった。残土による不適切な盛り土が被害を拡大させたといわれる。事業者は市の再三の指導に従わず、県の条例に反する盛り土を造成したとされる。

 総務省の調査でも、同様の問題が浮き彫りになった。熱海市の土砂災害は決して例外ではなく、他の自治体でも起こり得ることを示唆している。

静岡県熱海市で発生した土石流の起点となった盛り土。造成当初の様子。県と市は2009年11月に事業者への対応を協議した(写真:熱海市)
静岡県熱海市で発生した土石流の起点となった盛り土。造成当初の様子。県と市は2009年11月に事業者への対応を協議した(写真:熱海市)
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 総務省は、20年1月~21年12月に調査を実施した。土砂条例を制定している12都道府県と29市町村を対象に、15年度以降の不適切な残土埋め立ての有無を尋ねたところ、12都道府県全てと20市町村が「ある」と回答した。

不適切な埋め立ての把握状況。5件は都道府県と市町村で重複(資料:総務省)
不適切な埋め立ての把握状況。5件は都道府県と市町村で重複(資料:総務省)
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 それら32自治体が把握している不適切事案120件のうち、34件で土砂流出が発生。11件で騒音や振動などの被害が生じていた。土砂流出など被害の恐れのある34件と合わせると、全体の7割近くが安全上の問題を抱えていた。

不適切な埋め立ての被害状況。重複する事案もある(資料:総務省)
不適切な埋め立ての被害状況。重複する事案もある(資料:総務省)
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 不適切事案120件に対する規制の内容を見ると、土砂条例が77件、農地法や森林法など土地の形質変更を対象とする法令が49件、廃棄物処理法が23件だった。複数の法令に該当する事案もあった。

 18件は規制する法令がなかった。そのうち、4件は土砂の流出や崩落、その恐れの他、人的被害も発生した。この4件は、埋め立て面積が土砂条例の許可要件に当たらなかった。事業者による「条例逃れ」とみる自治体もある。

 この自治体によると、事業者は条例の許可の対象規模を超えないよう、場所を変えながら埋め立てをしている。ある埋め立て地が対象規模に達しそうになると、新たに確保した場所で埋め立てを始める。いずれも管理がずさんで、崩落の恐れがある。

 「事業者は条例を知っているが、許可を受けるつもりがない。強制力のある対応ができず、終息に至らない」と、自治体は頭を抱える。