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 首都高速道路会社は、管内のトンネルと橋梁で増えている重大な損傷を踏まえて、2024年度から新たな大規模更新・修繕事業に着手する。21年12月22日に有識者でつくる技術検討委員会(委員長:前川宏一・横浜国立大学大学院教授)を設立。鉄筋の腐食やコンクリート床版の減厚、支承の圧壊といった損傷への対応策について議論を始めた。22年中をめどに中間取りまとめを実施する。

新たな大規模更新・修繕事業で対策を講じる羽田トンネルの損傷例。延長300mのうち、開削区間が200mで、ケーソン区間と沈埋区間が50mずつを占める(資料:首都高速道路会社)
新たな大規模更新・修繕事業で対策を講じる羽田トンネルの損傷例。延長300mのうち、開削区間が200mで、ケーソン区間と沈埋区間が50mずつを占める(資料:首都高速道路会社)
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 同社は14年度から、管理する全長327kmの路線のうち損傷が著しい計8.5kmの区間で大規模更新、計55kmの区間で大規模修繕を進めている。大規模修繕は24年度までに終える予定だ。一方、点検や修繕を進める中で、それ以外の区間の損傷や目視が難しい支承の破損、補修後の再劣化といった新たな課題が明らかになった。

検討委員会の初会合後、会見に出席した首都高速道路会社の前田信弘社長(左)と前川宏一委員長。前田社長は冒頭、「首都高の構造物の健全性を長期にわたって保つために、具体的に実施すべき対策や優先度、検討すべき事項などを議論いただく」と検討委員会の趣旨を説明した。前川委員長は、「(損傷した構造物を)10年から20年放っておくと、かつての米国のように直すものよりも駄目になるものが増えてしまう」と指摘。「元に戻すのではなく、当初より安全で快適な構造にしたい」と意気込んだ(写真:日経クロステック)
検討委員会の初会合後、会見に出席した首都高速道路会社の前田信弘社長(左)と前川宏一委員長。前田社長は冒頭、「首都高の構造物の健全性を長期にわたって保つために、具体的に実施すべき対策や優先度、検討すべき事項などを議論いただく」と検討委員会の趣旨を説明した。前川委員長は、「(損傷した構造物を)10年から20年放っておくと、かつての米国のように直すものよりも駄目になるものが増えてしまう」と指摘。「元に戻すのではなく、当初より安全で快適な構造にしたい」と意気込んだ(写真:日経クロステック)
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 検討委員会で対応策を議論する構造物の1つが、延長300mの羽田トンネルだ。首都高で初の海底トンネルとして1964年に開通した。2014年からの5年間で、ひび割れや浮きなど鉄筋の腐食に起因する損傷が297カ所見つかっている。

 特に、開削工法で施工した200mの区間では構造目地から漏水が発生。車道の天井に相当する鉄筋コンクリート製の「中床版」では、塩害による腐食で鉄筋が一部消失していた。部分的な補修で安全性を保っているものの、抜本的な対策は避けられない。塩分の除去や中床版の再構築など打開策を検討する。