全1777文字
PR

 東京都調布市で起こった道路陥没などシールド工事で相次ぐ事故を受け、国土交通省は調査や設計、施工に関するガイドラインを策定した。2021年12月21日に、過去のトラブルや工夫の事例集と共に公表した。中断が続く東京外かく環状道路(外環道)の大深度地下トンネル工事や、これから本格化するリニア中央新幹線の工事などでの活用を見込む。

 20年6月に横浜市内を通る相鉄・東急直通線の新横浜トンネルの工事で、同年10月には外環道の大深度地下トンネル工事で、それぞれ地表面の陥没事故が発生。いずれの事故も、シールド機による土砂の取り込み過ぎが原因だと判明している。

2020年6月12日に横浜市内を通る相鉄・東急直通線の新横浜トンネルの工事によって起こった道路陥没の現場(写真:鉄道建設・運輸施設整備支援機構)
2020年6月12日に横浜市内を通る相鉄・東急直通線の新横浜トンネルの工事によって起こった道路陥没の現場(写真:鉄道建設・運輸施設整備支援機構)
[画像のクリックで拡大表示]

 国交省は21年9月に有識者でつくる技術検討会を立ち上げ、建設会社へのアンケート調査の結果に基づいて過去の事故事例や現場の工夫を分析。施工技術を底上げするためのノウハウを検討した。

 ガイドラインでは、掘削する地盤などを調査する段階から施工時に起こり得るリスクを整理することが必要だと指摘。設計や施工の各段階に、リスクとその対応策を引き継ぐ重要性を強調している。国交省は「シールドトンネル工事の調査や設計、施工における幅広い関係者に工夫してもらいたい」(大臣官房技術調査課)とし、受発注者にガイドラインの順守を求めている。

 記載内容は、地質や埋設物の有無を調べる調査から始まり、覆工セグメントやシールドの設計、トンネルの施工、騒音・振動対策などに及ぶ。

ガイドラインの目次(資料:国土交通省)
ガイドラインの目次(資料:国土交通省)
[画像のクリックで拡大表示]

 施工の各工程については要求事項と解説に加えて、参考となるトラブル事例や各社の工夫を列挙した。例えば泥水や泥土の状態を調整・管理するプロセスでは、地上に泥水が漏出した事例や地山にれきが多いといった不利な施工環境を例示。掘削土砂に加える添加材や送り込む泥水を変更できるように事前に用意しておく、排出される泥水や土砂の計測手法を増やすといった事例をまとめている。