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 国土交通省が建設工事受注動態統計調査のデータの書き換えと二重計上をしていた問題で、同省の根深い隠蔽体質が浮き彫りとなった。書き換え問題を指摘した会計検査院や、政府の統計の改善を進める総務省に対し、二重計上の事実を伝えなかっただけでなく、書き換えに関する虚偽の報告もしていた。国交省の検証委員会や総務省の検証チームが2022年1月14日に公表した報告書で明らかになった。

建設工事受注動態統計調査を巡る国土交通省の不適切処理の一覧。国交省の検証委員会の報告書と併せ、同省が2022年1月14日に公表した。表の⑤と⑥の他、欄外の公文書管理上の問題は新たに明らかにした内容(資料:国土交通省)
建設工事受注動態統計調査を巡る国土交通省の不適切処理の一覧。国交省の検証委員会の報告書と併せ、同省が2022年1月14日に公表した。表の⑤と⑥の他、欄外の公文書管理上の問題は新たに明らかにした内容(資料:国土交通省)
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 建設工事受注動態統計調査は、統計法に基づく国の基幹統計調査の1つで、建設業許可を持つ約1万2000社を対象に毎月実施している。建設会社の調査票の提出が期限に間に合わなかった場合、遅れた月の分を提出された月の分に合算して提出するよう、国交省が都道府県にデータの書き換えを指示していた点が問題となった。

 同調査は00年4月に、それまでの公共工事着工統計調査、民間土木工事着工調査、建設工事受注調査の3調査を再編・統合して開始した。データの書き換えは、公共工事着工統計調査などの時代から行われていた。

 現行調査の開始以降は、全国説明会を毎年開催し、建設会社が鉛筆で記入した内容を消しゴムで消すなど、具体的な書き換え手法を説明していた。国交省の担当者は、建設会社が遅れて提出した調査票のデータを書き換えた理由として、主に次の理由を挙げた。

 「建設会社が遅れて提出した分を公表済みの統計に組み込むことが実務上困難だった」「提出が遅れた分を除外すると、年間で見た受注高が正しい数値を下回る」「調査票の裏面に記載された個別工事内訳の数値まで有効活用するには合算以外の方法がなかった」

 国交省の担当者によると、調査を担う統計室には、体調が万全でない職員や時間外労働が困難な職員が配置されることが多く、慢性的な人員不足に陥っていた。国交省の検証委は、「人事政策における統計業務の軽視がある」と指摘した上で、同省がデータの書き換えを続けてきた原因を次のように説明する。

 「建設統計に関わる部署においては、統計予算・人員の削減と専門性を持つ人材の不足に直面していた。統計に関する専門知識が乏しく、統計に対する情熱もない職員にとって、先人の統計手法を踏襲するやり方は、安直で実践的であった。従前から行われている手順に従って黙々と業務をこなすことに疑問を持たず、その結果、不適切処理が長年無批判に継続して行われることとなった」