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 大規模造成工事にイノベーションをもたらす――。大林組は2022年4月にも、重ダンプトラックの自律走行に向けた実証実験を国内で始める。米シリコンバレーのスタートアップ企業SafeAI(セーフエーアイ)との協業を通じて自律化した重ダンプを米国から輸送し、日本の通信環境でも問題なく動かせるかテストする予定だ。これに先立ち、シリコンバレーで21年11月に実施した実証実験の模様などをリポートする。

実証実験に用いた米キャタピラー製のアーティキュレートダンプトラック。運転席の屋根にLiDARなどが取り付けてある。安全確保のために運転手が乗っているが、ハンドルには手を触れていない(写真:大林組、SafeAI)
実証実験に用いた米キャタピラー製のアーティキュレートダンプトラック。運転席の屋根にLiDARなどが取り付けてある。安全確保のために運転手が乗っているが、ハンドルには手を触れていない(写真:大林組、SafeAI)
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 造成工事の生産性向上や、重機のオペレーター不足への対応を念頭に両社が取り組んでいるのは、米Caterpillar(キャタピラー)製アーティキュレートダンプトラック(中折れ式の車体構造を持つダンプ)の自律走行だ。

 最大積載量約24tのダンプに、LiDAR(ライダー)やカメラ、自己位置・姿勢を推定するGNSS(衛星測位システムの総称)/IMU(慣性計測装置)ユニットとコンピューターを取り付け、セーフエーアイが開発した制御ソフトウエアで自律走行させる。ソフトウエアは、セーフエーアイがコンピューター上で走行シミュレーションを繰り返すなどして磨き上げた。ダンプのメーカーや型式を問わずに自律化できるのが同社の強みだ。

 シリコンバレーの山中にある採石場で21年11月4日に実施した実証実験では、土砂の積み込みから荷下ろしまでの一連の動きを自律化できるか確認した。

 実験では、土砂の積み込み地点まで走行してから3ポイントターン(方向転換)をして停止し、積み込みが完了すれば再発進。荷下ろし地点で再び3ポイントターンをして停止し、土砂を所定の位置に降ろしてスタート地点に戻る、というサイクルを3回実施した。土砂を積み込むホイールローダーのみ、人が乗って操縦する。

実証実験でこなす作業の流れ(資料: SafeAI、大林組)
実証実験でこなす作業の流れ(資料: SafeAI、大林組)
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 1周目で確かめたのは、設定したルートを上述の通りに自律走行できるかどうか。ダンプは停止したり経路を外れたりすることなく、スムーズに一連のサイクルをこなしてみせた。シリコンバレーに駐在し、協業に取り組んできた大林組ビジネスイノベーション推進室の佐藤寛人部長は、「3ポイントターンも素早く決められる」と語る。

米国での実証実験(1周目)
ダンプには安全確保のために人が乗っているが、運転はしていない。動画の速度は2倍に設定し、音声は消去した(動画:SafeAIと大林組の資料を日経クロステックが加工)

 セーフエーアイでエンジニアリングヘッド(日本支社)を務める塩野皓士氏は、「車体の位置を精度よく推定できること、経路計画に先進的なアルゴリズムを用い、軌道をうまく描けること、計画をきちんと実行する制御アルゴリズムを持っていること。この3つがポイントだ」と説明する。21年10月1日付で設立したSafeAIジャパン合同会社(東京・中央)の平塚龍代表は「真っすぐの道なら、経路から25cmしかずれずに走行できる」と話す。

 位置の推定には、事前に作製しておいた現場の3次元デジタルマップとGNSS、LiDARで取得した情報を用いている。現場では作業環境が日々変化するため、デジタルマップは更新する必要がある。実装する際は、最初に計測してベースとなるマップを作製し、その後は重機が自律走行しながら取得したデータでアップデートしていく考えだ。