西武ホールディングス(HD)が進めるグループ企業の再編で、建設事業を手掛ける子会社への対応が分かれている。西武建設(埼玉県所沢市)を「非中核」と位置付けて外部に売却する一方、西武造園(東京・豊島)にはグループビジョンに基づく「グリーン経営」の一翼を担わせるとみられる。
西武HD傘下の西武鉄道は2022年1月27日、保有する西武建設の株式を通信工事大手のミライト・ホールディングス(HD)に譲渡する契約を締結。ミライトHDが同年3月末に西武建設の株式の95%を取得し、子会社化する。
西武HDでは、新型コロナウイルスの影響でグループの中核事業である鉄道とホテルの利用が低迷。21年3月期に、連結で723億円の最終損失を計上した。赤字額は私鉄大手15社で最も大きかった。
21年5月13日に公表した中期経営計画(21~23年度)では、保有資産を圧縮して財務の改善を進める「アセットライト」を重要な経営テーマに掲げた。その第1弾として、同日に西武建材(所沢市、当時)の売却を打ち出した。
同社は西武建設の全額出資子会社で、北関東や静岡県を中心に、砂利や砂など土木建築用原材料の生産・加工販売を手掛けてきた。しかし中期経営計画では、「ノンコア(非中核)資産・事業」として、外部への売却が決まった。
売却先は、建築材料の製造・卸売りを主力とする東和アークス(さいたま市)だ。同社は21年7月1日、西武建材の全株式を取得し、完全子会社化した。西武建材は4カ月後の11月1日に、社名をSKマテリアルに変更し、本社を埼玉県の所沢市から狭山市へ移した。
西武建材の一件は、西武建設売却の前哨戦だった。西武HDは、西武建設も同様にノンコア資産・事業と判断。キャッシュ(現金)の創出効果も見込めることから、外部への売却を決めた。最近は、大手住宅会社による建設会社の買収が相次いでいる。大手住宅会社を含む複数の建設会社が買収に名乗りを上げれば、西武建設を高値で売れるとみた。
結局、ミライトHDが提示した株式取得価格は、アドバイザリー費用を含めて約620億円。西武HDは22年3月期の連結決算で、株式売却益約380億円を特別利益として計上する。