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 政府が打ち出した賃上げ企業に対する入札優遇措置が、2022年4月の開始を前に現場を混乱させている。財務省が22年2月8日に出した各省庁宛ての通知で、賞与や残業代を含めた年間給与で判断するとしていた当初の方針を転換。賞与を含めるかどうかを各企業の判断に委ねた他、新卒採用や再雇用の従業員、育児・介護休暇の取得者などを実情に応じて対象から外せるようにした。業界団体などから上がった批判の声に配慮した形だ。

財務省が2月8日に各省庁へ通知した文書の一部(資料:財務省)
財務省が2月8日に各省庁へ通知した文書の一部(資料:財務省)
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 入札優遇策は、政府が掲げる「成長と分配の好循環」の方針を受け、財務省が21年12月17日に各省庁へ通知した。従業員の給与を大企業は3%、中小企業は1.5%引き上げると表明すれば、国が実施する総合評価落札方式の入札で加点する制度だ。国土交通省もこの通知に従い、22年4月から直轄の工事・業務の入札で、賃上げ企業への加点措置を取り入れる。

国土交通省近畿地方整備局が導入する賃上げ企業への加点制度の概要。他の地方整備局も、加点数などは基本的に同じだ(資料:国土交通省近畿地方整備局)
国土交通省近畿地方整備局が導入する賃上げ企業への加点制度の概要。他の地方整備局も、加点数などは基本的に同じだ(資料:国土交通省近畿地方整備局)
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 しかし、国交省が導入の方針を示すと、建設業団体などから相次いで困惑や疑問、批判の声が上がった。その1つが、対象とする賃金の範囲についての批判だ。財務省の通知に従い、当初は賞与などを含む給与の年間支給額で賃上げ率を判断するとしていた。しかし多くの会社で、賃上げを表明した時点では、その後の業績に左右される賞与の額は決めていない。

 賃上げ表明による加点を受けて受注しながら、3%または1.5%の賃上げを達成できなかった場合、大きなペナルティーを科される。他の省庁の発注案件も含めて、その後1年間にわたって加点以上の点数を総合評価の入札で減点される。

 前年に災害復旧などで仕事が急増して残業代などが増えていた場合、次の年はその反動で下がる可能性もある。そのような不確定な要素を含む年間給与が対象では、事前に引き上げを表明するのはリスクが高い。

 2月8日の財務省の通知では、こうした事情を考慮して賞与を外した評価を可能にした他、対象とする給与・従業員のバリエーションを増やし、様々な例外措置を認めた。