陥没事故を起こした東京外かく環状道路(外環道)の大深度地下トンネル工事を巡り、住民らが工事中止を申し立てた仮処分について、東京地裁は2022年2月28日、陥没地点を含む一部区間の工事を差し止める決定をした。2月25日に大泉ジャンクション(JCT)付近で再開した掘進作業などの中止については却下した。
差し止めの対象は、東京都世田谷区にある東名高速道路側のたて坑から東京都調布市の事故現場の地下を通って中央自動車道側へ至る2本の本線シールドトンネル工事だ。建設中の本線約16kmのうち南側の約9kmの区間に当たる。掘削区間が重なる接続路のシールド工事は含まない。
事故現場周辺の住民らは国と東日本高速道路会社、中日本高速道路会社の事業者3者を相手に、本線や接続路にある計7台のシールド機による掘削工事の差し止めを求めていた。
事業者3者は、陥没箇所を通る2本のトンネルについて、事故の再発防止策や工事の再開時期を明らかにしていない。目代真理裁判長は、有識者委員会が21年3月にまとめた報告書を基に、掘削工事と陥没事故の因果関係を認定。「工事再開により陥没や空洞が生じる恐れがある」と指摘した。工事が再開されない保証がないとして、事故以前と同じ工法による工事の中止を命じた。
事業者3者は決定を受け、「内容をよく確認し、関係機関と調整して適切に対応したい」とするコメントをそれぞれ出した。
掘削を再開した本線トンネル工事や接続路のトンネル工事など残り5本のシールド工事については、申し立てを退けた。差し止めを求めた住民の居住地域と離れていて、工事の影響が及ばないと判断した。