厚生労働省は、40年の法定耐用年数を超えた水道管について、今後20年間に全国で年約7000kmの更新が必要になるとの試算をまとめた。実務上の一般的な更新基準である60年で算定した。費用負担の問題などで法定耐用年数に基づく水道管の更新は困難だとの見方が強まっているためだ。2022年3月9日に開いた全国水道関係担当者会議で推計結果を報告した。
厚労省によると、全国の管路の総延長約73万kmのうち、法定耐用年数を超えた管路の割合(経年化率)は、19年度に19.1%。06年度の6%から10年余りで3倍に上昇した。高度経済成長期など水需要の拡大期に管路を大量に敷設した影響が大きい。
一方、管路の総延長に対する年間の更新延長の割合(更新率)は、19年度に0.67%と、01年度の1.54%から20年近くで半減した。人口減少などに伴う水道使用量の減少で、料金収入に基づく独立採算制の事業の経営が悪化している影響があるとみられる。
水道事業を担う自治体では、法定耐用年数による一律の管路更新は困難だとみる向きが多い。高度経済成長期などに敷設した大量の管路を法定耐用年数に基づいて一斉に更新すれば、事業期間が集中し、費用負担が重くなるからだ。
法定耐用年数は、地方公営企業法で施設ごとに定めている減価償却費を算出するための期間だ。管路は一律に40年と規定している。ただし、あくまで経理上の基準にすぎず、実際に管路を使用できる年数とは異なる。
自治体では、法定耐用年数に代わる管路の更新基準として、材質(管種)などに応じた実使用年数を用いる動きが広がっている。更新時期の先送りや分散が図れるため、費用負担の削減と平準化が可能になるためだ。年間予算の3分の1の削減を見込む自治体もある。
厚労省も、実使用年数に基づく更新基準の設定例を管種ごとに公表している。例えば、ダクタイル鋳鉄管は最長80年、硬質塩化ビニール管とポリエチレン管は最長60年などとしている。