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 再エネ海域利用法に基づく洋上風力発電事業への国の姿勢が定まらない。経済産業省と国土交通省は、事業者を公募で選ぶ際、従来の発電コストの安さに加え、稼働時期の早さも「担保」する方向にかじを切る。先行する秋田県沖と千葉県沖の計3海域の事業を三菱商事系コンソーシアム(企業連合)が「価格破壊」で独占したことへの業界や政界の反発が広がる中で方針を転換した。

 両省は2022年3月18日、3カ月前に公募を始めた「秋田県八峰町及び能代市沖」の受付期限(6月10日)を延長し、新たな審査基準で事業者を選ぶ考えを明らかにした。3月22日に開いた有識者会議で議論を始め、22年内をめどに審査基準を変更する。夏以降に指定する新たな促進区域と併せて、公募を仕切り直す予定だ。

経済産業省と国土交通省が「秋田県八峰町及び能代市沖」の公募要件をまとめた「公募占用指針」の新旧対照表。左が2021年12月10日の公募開始時に示した内容で、右が22年3月18日の審査基準の見直しの公表に併せて修正した内容(資料:経済産業省、国土交通省)
経済産業省と国土交通省が「秋田県八峰町及び能代市沖」の公募要件をまとめた「公募占用指針」の新旧対照表。左が2021年12月10日の公募開始時に示した内容で、右が22年3月18日の審査基準の見直しの公表に併せて修正した内容(資料:経済産業省、国土交通省)
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 両省は審査基準の見直しの理由として、ロシアによるウクライナ侵攻を挙げる。「エネルギー安全保障」の重要性が高まり、脱炭素の国産エネルギー源として再生可能エネルギーの導入の加速が急務になっていると説明する。

 さらに、21年12月に公表した「秋田県能代市、三種町及び男鹿市沖」「秋田県由利本荘市沖」「千葉県銚子市沖」の公募結果で、洋上風力発電が太陽光発電と競争可能なコストの大規模電源であることが明らかになったと指摘。エネルギー政策上、洋上風力発電の早期稼働を促す観点から、公募中の八峰町・能代市沖の審査基準の見直しを決めたという。

 両省は22年3月22日の有識者会議で、事業者選定に関する今後の方向性を示した。例えば、運転開始のスケジュールを重点的に評価する一方、遅れた場合の罰則を導入。複数の促進区域の公募を同時に行う場合は、同一事業者による落札区域数の制限などを提案した。

経済産業省と国土交通省が2022年3月22日の有識者会議で示した事業者選定の今後の方向性(資料:経済産業省、国土交通省)
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経済産業省と国土交通省が2022年3月22日の有識者会議で示した事業者選定の今後の方向性(資料:経済産業省、国土交通省)
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経済産業省と国土交通省が2022年3月22日の有識者会議で示した事業者選定の今後の方向性(資料:経済産業省、国土交通省)
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