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 公共事業の積算に使う労務単価の上昇率に比べて、技能者の賃金収入が増えていない実態が明らかになった。受注競争の激しい民間工事で、建設会社が労務費を過度に抑えている可能性がある。国土交通省が2022年3月14日に開いた中央建設業審議会総会で説明した。

全国・全職種平均の公共工事設計労務単価の推移。2014~16年度は2月から、17~22年度は3月から、それぞれ前倒しで新単価を適用。国土交通省の資料を基に日経クロステックが作成
全国・全職種平均の公共工事設計労務単価の推移。2014~16年度は2月から、17~22年度は3月から、それぞれ前倒しで新単価を適用。国土交通省の資料を基に日経クロステックが作成
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 厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、建設業生産労働者(技能者)の平均年収は、18年と19年がともに460万円。調査方法が変わった20年は、国交省の推計で467万円だった。一方、国交省が決定する労務単価の全国・全職種平均は、18年度が1万8632円、19年度が1万9392円、20年度が2万214円と、毎年ほぼ4%ずつ上昇した。

 20年度の労務単価が18年度比で8.5%増えたのに対し、技能者の平均年収は18年から20年までの間に1.5%の伸びにとどまった。この間、全産業の平均年収は18年の531万円から20年の522万円へと1.7%減少した。技能者の平均年収が増えたのは、国交省による労務単価の引き上げの影響が大きいとみられる。

 それでも国交省は、全産業平均に比べて、20年の技能者の年間出勤日数が14日多い一方で、平均年収が55万円少ない実態に着目。さらに、労務単価の上昇率に比べて技能者の平均年収の伸び率が小さい状況を問題視する。

 そこで、技能者の平均年収について、週休2日を前提に、労務単価を適切に反映した賃金に所定外給与を加えて試算したところ、18年が474万円、19年が495万円、20年が518万円となった。20年では、全産業平均との差が4万円に縮まる。

厚生労働省の賃金構造基本統計調査に基づく産業別の年収。同省の職種別年収調査は2019年で廃止となったため、20年の数値は国土交通省が職種別小分類を用いて推計した。建設業生産労働者の試算年収は、国交省が「設計労務単価×234日(週休2日)+所定外給与」の計算式で算出した。国交省の資料を基に日経クロステックが作成
厚生労働省の賃金構造基本統計調査に基づく産業別の年収。同省の職種別年収調査は2019年で廃止となったため、20年の数値は国土交通省が職種別小分類を用いて推計した。建設業生産労働者の試算年収は、国交省が「設計労務単価×234日(週休2日)+所定外給与」の計算式で算出した。国交省の資料を基に日経クロステックが作成
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 国交省は、公共工事のようにダンピングを防ぐ仕組みがない民間工事では、十分な請負金額と適切な工期が確保されていないと分析。多重下請け構造の下、労務費が激しい「ダンピング競争」にさらされているとみる。

 その上で、毎年引き上げてきた労務単価に相当する賃金が技能者一人ひとりに行き渡れば、他産業と同等の年収や週休2日を達成できると指摘。その実現のために、不当に低い請負金額の基準や適切な労務費の目安、建設キャリアアップシステム(CCUS)のレベルに応じた年収の目安を、国が示すべきではないかと提案した。

適切な労務費の目安を示す「見える化」「標準化」のイメージ(資料:国土交通省)
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建設キャリアアップシステム(CCUS)のレベルに応じた技能者の年収の目安を示すイメージ(資料:国土交通省)
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