2021年に顕在化した原材料価格の高騰を工事金額などに十分に転嫁できていない建設業の実態が、日銀が3カ月ごとに実施する全国企業短期経済観測調査(短観)で浮き彫りになった。ロシアのウクライナ侵攻(ウクライナ危機)の影響で原材料価格のさらなる上昇が見込まれる中、建設会社は難しい経営のかじ取りを迫られる。
日銀が22年4月1日に公表した3月の短観によると、工事受注額など販売価格が「上昇」と答えた企業の割合(%)から「下落」と答えた企業の割合を引いた建設業の販売価格判断指数(DI)はプラス6と、21年12月調査を3ポイント上回った。
企業規模別では、大企業(資本金10億円以上)が3カ月前のプラス7からプラス10、中堅企業(同1億円以上10億円未満)が0からプラス7、中小企業(同2000万円以上1億円未満)がプラス2からプラス6に、それぞれ上昇した。
一方、仕入れ価格の「上昇」の割合から「下落」の割合を引いた建設業の仕入れ価格判断DIはプラス57と、21年12月調査を12ポイント上回った。企業規模別では、大企業が3カ月前のプラス40からプラス56、中堅企業がプラス47からプラス55、中小企業がプラス45からプラス58に、それぞれ上昇した。
原材料価格の高騰の影響で、仕入れ価格と販売価格はともに上昇しているものの、原材料高を工事金額などに転嫁し切れていない状況が見て取れる。
特に、中小企業では販売価格判断DIと仕入れ価格判断DIの乖離(かいり)が最も大きく、21年12月調査よりもその差が拡大、事業採算が悪化した。仕入れ価格判断DIの上昇幅が最も大きかった大企業も、3カ月間で仕入れ環境が厳しさを増した。