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 財務省は、災害リスクの低減とインフラ維持費の抑制を図るため、居住地のコンパクト化を促す。災害危険地域からの移住促進や都市計画における開発抑制エリアの拡大などを提唱する。2022年4月20日の財政制度等審議会の歳出改革部会で考え方を示した。

 財務省によると、災害リスクの低い土地への人口移動は、被害の軽減だけでなく、行政の効率化による財政の持続可能性の確保にもつながる。しかし実際には、財務省の思惑とは逆の方向に動いている地域もある。

都道府県別の全人口の増減率(青色)と洪水浸水想定区域内の人口増減率(赤色)。洪水浸水想定区域内の人口増減率は、2012年の同区域における1995年と2015年の人口を比較して算出。国土交通省の分析を基に財務省が作成した
都道府県別の全人口の増減率(青色)と洪水浸水想定区域内の人口増減率(赤色)。洪水浸水想定区域内の人口増減率は、2012年の同区域における1995年と2015年の人口を比較して算出。国土交通省の分析を基に財務省が作成した
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 国土交通省が2012年時点の洪水浸水想定区域の1995年と2015年の状況を比較したところ、32都道府県で区域内の人口が増えた。そのうち、21道府県では全人口が減少した一方で、区域内の人口は増加した。これらの道府県では、災害リスクの高い地域へ人口が集まっている様子が浮き彫りになった。

 このため、財制審は21年5月の建議で、自治体の適切な土地利用規制を促進するための方策を22年度までに検討すべきだと提言。国交省は浸水想定区域内の人口動態の変化を地図上に表示するシステムを開発し、22年6月から順次公表していく方針を示した。

 財務省は、国交省のシステムを通じて、災害リスクの高い地域の人口動態を可視化し、自治体がリスクの低い地域への居住誘導をPDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルで回していけるようにすべきだと主張する。

災害エリアにおける人口動態データの可視化のイメージ。国土交通省が2022年6月から順次公表していく予定(資料:財務省)
災害エリアにおける人口動態データの可視化のイメージ。国土交通省が2022年6月から順次公表していく予定(資料:財務省)
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 また、21年7月に静岡県熱海市で発生した土石流を受け、盛り土の安全対策の強化が叫ばれる中、宅地として利用されている大規模な盛り土の造成地について、ほとんどの自治体が地盤調査による安全確認を行っていない事実も判明している。

 国交省の調査によると、21年3月末時点で大規模な盛り土の造成地の有無を公表している1741市区町村のうち、地盤調査に着手しているのは63市区町村と全体の3.6%にすぎない。財務省では、危険性が疑われる造成地については、立地適正化計画における居住誘導区域に含めるべきではないと指摘している。

大規模な盛り土の造成地における地盤調査の状況(資料:財務省)
大規模な盛り土の造成地における地盤調査の状況(資料:財務省)
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