北九州市が進める災害リスクの高い土地への開発抑制策が大幅に後退した。市は2022年4月21日、都市計画の区域区分を見直して傾斜地などにある既存宅地を市街化調整区域に編入する「逆線引き」に関して、候補地を当初案の30%弱に縮小すると発表した。候補地の人口は、当初案の1%強に減る。資産価値が下がるといった住民の反発を受けて規模を縮小した。
市都市計画課は逆線引きの実施時期について、「23年度末までの都市計画決定を目指しているが、それにこだわらず、しっかりと住民など関係者との合意形成を図りながら手続きを進める」とコメントした。
北九州市は18年の西日本豪雨で相次いだ宅地の土砂災害を受け、市内全域で災害リスクが高い斜面宅地などを市街化調整区域に編入する施策の検討に着手した。対象候補地の当初案を19年12月以降に公表し、早ければ21年度末の編入決定を目指していた。
調整区域への編入によって新規の開発を抑制し、将来的に無居住化。その一方でコンパクトシティー政策を推進し、市中心部に人口やインフラを集約する――。こうした施策で土砂災害などの被災者を減らす考えだった。しかし、候補地の縮小で、施策の防災効果は低下する見通しとなった。