千島海溝・日本海溝沿いなどを震源とする大規模な地震で最大級の津波が悪条件下で発生した場合、宮城県内の浸水面積が東日本大震災よりも2割拡大することが県の想定で分かった。浸水域には、震災被災者の集団移転先も含まれる。沿岸の自治体では、避難計画やハザードマップなどの見直しを迫られる可能性がある。
県が2022年5月10日に公表した津波浸水想定は、11年12月に施行された津波防災地域づくり法に基づく。同法は震災を教訓に、最大級の津波が発生した場合に想定される浸水の区域と水深の設定を都道府県に義務付けている。
県は、内閣府が巨大地震の津波断層モデルとして12年3月に公表した東北地方太平洋沖地震モデルの他、20年4月公表の千島海溝(十勝・根室沖)モデルと日本海溝(三陸・日高沖)モデルを基に、津波浸水想定の検討を進めてきた。
浸水域や浸水深の算出では、発生頻度が極めて低いものの発生すれば甚大な被害をもたらす最大級の津波(L2津波)が、悪条件の重なった状況で発生した場合を想定。悪条件として、(1)地盤沈下(2)満潮(3)防潮堤破壊(破堤)――の3つを設定した。
シミュレーションの結果、沿岸で最も高い津波が予想されるのは気仙沼市本吉町で、高さは東京湾平均海面(TP)から22.2mに達する。南三陸町戸倉は21.2m、女川町海岸通りは20.7mと、3地点で20mを超える。石巻市雄勝町では19.6mと、それらに次ぐ規模となる。
第1波や最大波の到達時間の算出などを目的に海岸線から250~500m程度の沖合に設定する代表地点の津波水位は、気仙沼市登米沢が21.7mと最も高い。その最大波の到達時間は41分で、第1波から14分後に襲来。同市唐桑町の4地点と石巻市の2地点(雄勝町熊沢、金華山港)では、第1波が県内最速の21分で訪れる。