国土交通省は、土砂崩落や環境破壊を招く「危険な盛り土」の防止に向け、不適切な埋め立てなどに使われる建設発生土(残土)の管理を強化する。公共工事入札契約適正化法(入契法)の適正化指針を変更し、自治体などに残土の適正処理を促す取り組みを盛り込んだ。
政府は2022年5月20日、適正化指針の変更を閣議決定。斉藤鉄夫国交相は同日の会見で、「建設発生土の適正処理の推進のため、公共工事の発注段階で搬出先を指定する取り組みや、運搬費などの適切な計上について明記した」と説明した。
21年7月に静岡県熱海市で発生した土石流では、起点にあった盛り土が被害を拡大させたといわれる。盛り土の造成には、県内外から持ち込まれた大量の残土が使用されたとみられる。これを機に、危険な盛り土の造成に対する規制の強化と併せ、適正な残土処理の徹底を促す取り組みが求められるようになった。
22年5月20日には、盛り土の規制を強化する盛土規制法が参院本会議で可決・成立した。同日に入契法適正化指針の変更が閣議決定されたことで、熱海土石流を教訓とした盛り土対策の車の両輪が本格的に動き出した。
適正化指針は従来、「公共工事の適正な施工を確保するためには、現場の問題発生に対する迅速な対応を図るとともに、地盤の状況に関する情報その他の工事に必要な情報について、発注者、設計者および施工者などの関係者間での把握・共有などの取り組みを推進する」と定めていた。
今回の変更で、発注者や施工者ら関係者が把握・共有する情報として、「建設発生土の搬出先に関する情報」を追加。その上で、地盤状況や残土搬出先など工事に必要な情報について、「設計図書において明示する」と規定した。
さらに、適正な予定価格の設定に関する内容も変更。適正な積算を行う対象として、これまで例示してきた法定福利費などの経費に加え、「建設発生土などの建設副産物の運搬・処分などに要する費用」を新たに明記した。