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 建設業で、政府の新型コロナウイルス対策の資金繰り支援などを受けた中小・零細企業の倒産が目立ち始めた。負債の少ない小規模な企業の倒産も増えている。業界全体の倒産件数は歴史的な低水準にあるものの、コロナ対策の効果が薄れる中、競争力や経営体力に劣る企業の淘汰が始まった可能性がある。

全業種における「コロナ融資後倒産」の推移(資料:帝国データバンク)
全業種における「コロナ融資後倒産」の推移(資料:帝国データバンク)
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「コロナ融資後倒産」の業種別の内訳。初めて発生が確認された2020年7月から22年5月までの累計(資料:帝国データバンク)
「コロナ融資後倒産」の業種別の内訳。初めて発生が確認された2020年7月から22年5月までの累計(資料:帝国データバンク)
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 帝国データバンク(TDB)が2022年6月8日に発表した「コロナ融資後倒産」の集計結果によると、政府系金融機関や民間金融機関による実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)を受けた後に倒産した会社の累計は、22年5月までに全業種で323件。そのうち建設業は61件で、製造業の67件、卸売業の65件に次いで多い。

 TDBが3カ月前に発表した22年2月までのコロナ融資後倒産の累計は、全業種で210件。業種別では小売業が44件と最も多く、次いで製造業(42件)、卸売業(42件)、建設業(38件)の順だった。建設業の累計件数は製造業とともに、この3カ月で6割程度増えている。

 TDBでは、コロナ禍で多くの中小企業の業績が悪化したものの、持続化給付金をはじめとする政府の支援策に加え、ゼロゼロ融資でそうした企業の資金繰りを下支えしてきたと分析。融資を受けた企業では今夏にも返済が本格化するとみられる中、収益力が戻らずに返済原資を確保できない「諦め」による倒産が増える可能性があると指摘する。

 持続化給付金とは、新型コロナの影響で売り上げが半減した中小・零細事業者らに最大200万円を給付するもの。中小企業庁が22年4月に公表した中小企業白書によると、事業終了の21年3月末までの給付比率は、建設業が19.3%と最も高く、卸売業・小売業(12.7%)と宿泊業・飲食サービス業(12.6%)が続く。

 同様に、コロナ禍で売り上げが半減した中堅以下の事業者らに対する最大600万円の家賃支援給付金でも、これら3業種の利用が多い。事業終了の21年3月末までの給付比率は、宿泊業・飲食サービス業(26.8%)、卸売業・小売業(13.9%)、建設業(9.9%)の順に高かった。

持続化給付金の業種別の給付比率。事業終了の2021年3月末時点の実績(資料:中小企業庁)
持続化給付金の業種別の給付比率。事業終了の2021年3月末時点の実績(資料:中小企業庁)
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家賃支援給付金の業種別の給付比率。事業終了の2021年3月末時点の実績(資料:中小企業庁)
家賃支援給付金の業種別の給付比率。事業終了の2021年3月末時点の実績(資料:中小企業庁)
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 財務省の財政制度等審議会が21年12月にまとめた建議では、「コロナ禍前から生産性が低かった企業ほど支援策を利用した傾向がある」との見方を紹介している。これは、経済産業研究所(RIETI)の所長を務める一橋大学経済研究所の森川正之教授が20年12月に公表した「コロナ危機対策利用企業の生産性」と題する論文で指摘した内容だ。

 森川教授は、RIETIが東京商工リサーチ(TSR)に委託して、20年8~9月に実施したアンケートを分析。「もともと生産性の低い企業がコロナ危機によって深刻な影響を受けた可能性を示唆している」と説明する。