リニア中央新幹線のトンネル工事の着手を認めていない静岡県が、沿線自治体でつくる「建設促進期成同盟会」への加入を申請している件で、同盟会は県が現行計画の下で建設を推進する意向があるか確認する。県が同意すれば、加入を認める方針だ。同盟会の会長を務める愛知県の大村秀章知事が2022年6月16日の会見で明らかにした。
同盟会が静岡県に確認するのは主に、現行ルートでのスピード感を持った整備促進や、東京—名古屋間の27年開業と大阪までの全線開業8年前倒し(37年全線開業)に取り組む考えがあるか否かだ。会長の大村知事は、6月15日までに会員から届いた意見を踏まえ、静岡県に文書で意向を確かめる必要があると判断した。
静岡県が同盟会への加入を申請したのは、6月2日の中部圏知事会。静岡県の川勝平太知事が愛知県の大村知事に加入申請の文書を手渡した。川勝知事は3年前の知事会でも、大村知事に加入の意向を伝えた。しかし、当時は会員の意見がまとまらず、留保となっていた。
大村知事は4日後の6月6日の会見で、「あの場でいきなり紙を持ってくるとは思っていなかった。普通は事前に話があるものだ。社会人ならね。そういう意味で、ちょっと驚いた」と振り返った。続けて、「(静岡県の文書には)建設促進に賛同だと書いてあるが、肝心の静岡工区については建設促進と書かれていない」と明かし、会員の意見を確認する考えを示した。
会員である神奈川県の黒岩祐治知事は6月10日の会見で、「静岡工区の早期着手が最大の課題だ。最近、川勝知事はルートに関することにも言及しているが、現ルートでの早期整備について、どのように考えているのか不明な点も多い。まずはそうした点について確認する必要がある」と指摘。さらに、次のように主張した。
「現在のルートは、本県(神奈川県)だけでなく沿線の各県においても、地域の人々に丁寧な説明を行って理解してもらいながら取り組みを進めてきた。ルート変更というのは、こうした地域の人々と積み上げてきたものが全て白紙に戻ってしまうため、どうしても避けるべきだ」
会員の長野県の阿部守一知事も同日の会見で、「静岡県として、現行ルートで整備促進をするという考え方に立つのであれば、一緒に取り組みを進めていきたい」と述べた上で、次のような考えを表明した。
「長野県内においても、色々な課題がある中で、周辺の人々の理解と協力を得ながら整備・促進を図ってきた。別ルートというのは、促進ではなく、振り出しに戻す形になりかねない。現行ルートでの整備促進をしっかり確認した上で参加してもらい、一緒に取り組みたい」