2021年7月に静岡県熱海市で起こった土石流などを踏まえた「盛土規制法」の公布を受け、国土交通省と農林水産省は盛り土の安全基準や規制区域の設定方法を具体化する。有識者などでつくる盛土等防災対策検討会(委員長:二木幹夫・ベターリビング総括役)を立ち上げ、22年6月15日に初会合を開いた。
新法では、都道府県知事などが盛り土の造成を規制する区域を指定する。区域内で一定規模を超える盛り土は、許可を受けなければ施工できない。新法は、22年5月27日の公布から1年以内に施行する。
検討会は主に、規制区域の指定の方針、基礎調査の要領、安全に関する技術基準、不法盛り土への対応の4点について具体策を議論する。22年9月をめどに、要領や基準などの案を取りまとめる。
新法では、崩れた盛り土が土石流となって下流域に被害を及ぼす恐れがある場合、宅地から離れた場所も規制区域に指定できると規定している。検討会では、市街地に流入する渓流の勾配や流域面積から規制区域を抽出する手法などを整理する。
技術基準については、盛土規制法の前身の宅地造成等規制法で運用している技術基準を土台として、森林や農地の盛り土にも適用できるよう改める。例えば、森林の集水地形などが盛り土の安定に及ぼす影響を検討する。新たに規制対象となった一時的な土石の仮置きでは、保安帯の設置といった安全対策を求める。
液状化対策も課題の1つだ。技術基準では新設する盛り土について、排水施設の整備などによって内部に間隙水圧が生じないように求める方針だ。一方、既存の盛り土は適用している安定解析の手法が一様でないと指摘。材料や構造も異なるため、今後検討していく必要があるとした。
一連の技術基準は政令で定める。その後、基準に沿った盛り土の設計・施工上の留意点を別途マニュアルとして整理。液状化対策の具体的な手法なども記載する予定だ。