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 2021年7月に起きた熱海伊豆山の土石流災害から1年。現場では国直轄で砂防堰堤(えんてい)の新設工事が進む。難条件の中、無人化施工やICT(情報通信技術)といった先端技術を活用しながら、緊急性と安全性を両立させた施工が続けられている。

 急斜面から崩れ落ちた大量の土砂が、家屋や車を一気に押し流した静岡県熱海市の土石流災害。2021年7月3日、JR熱海駅の北約1.5kmに位置する逢初(あいぞめ)川最上流の一帯(源頭部)が大雨によって崩壊し、泥状の土石流は約2km先の伊豆山港まで到達した。

 発災直後から全国に報道されて注目を集めた災害から1年が経ち、現場では新たな砂防堰堤が築かれている。設置箇所は既存の砂防堰堤から約320m下流側。堤高13m、堤長59m、堆砂容量1万800m3だ。23年3月の完成を目指し、22年6月時点で本堤のコンクリート打設を進めている。

新設する砂防堰堤の建設現場。2022年5月30日撮影(写真:国土交通省)
新設する砂防堰堤の建設現場。2022年5月30日撮影(写真:国土交通省)
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新設する砂防堰堤(えんてい)では、2022年6月時点でコンクリート打設が進んでいる(写真:大成建設)
新設する砂防堰堤(えんてい)では、2022年6月時点でコンクリート打設が進んでいる(写真:大成建設)
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左は、2021年7月3日に崩落した逢初川の源頭部。右は、新設する砂防堰堤の完成予想図(写真・資料:国土交通省)
左は、2021年7月3日に崩落した逢初川の源頭部。右は、新設する砂防堰堤の完成予想図(写真・資料:国土交通省)
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 堰堤新設を含む直轄砂防災害関連緊急事業は、静岡県知事の要請を受け、21年7月20日に始まった。翌21日には、国土交通省中部地方整備局の熱海緊急砂防対策チームが現地に入り、事業を受託した大成建設も21日、22日に現地踏査。わずか3日間で施工計画を作成し工事を開始した。さらに8月13日には効率的に工事を進めるべく、中部地整富士砂防事務所が「熱海緊急砂防出張所」を静岡県熱海総合庁舎内に設置した。

国土交通省中部地方整備局富士砂防事務所が設けた熱海緊急砂防出張所。8人体制で日々の業務に当たる(写真:国土交通省)
国土交通省中部地方整備局富士砂防事務所が設けた熱海緊急砂防出張所。8人体制で日々の業務に当たる(写真:国土交通省)
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 事業は6段階に分けられる。最初に(1)工事用車両が通れる進入路を整備。次に(2)既存の砂防堰堤にたまった土砂を撤去。続いて(3)応急的な「ネットロール土のう」を設置し、(4)22年12月に上流側に移設。同時に(5)ブロック堰堤を構築。その後(6)新たな砂防堰堤を構築する。

「逢初川水系逢初川 直轄砂防災害関連緊急事業」の実施内容(資料:国土交通省)
「逢初川水系逢初川 直轄砂防災害関連緊急事業」の実施内容(資料:国土交通省)
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土石流のうち約7200m3の土砂を捕捉した既存の砂防堰堤(写真:大成建設)
土石流のうち約7200m3の土砂を捕捉した既存の砂防堰堤(写真:大成建設)
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