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 再エネ海域利用法に基づく洋上風力発電事業で、企業間の自由競争を阻害する動きが強まってきた。政府は、事業者を公募で選ぶ際のルールとして、環境影響評価(環境アセスメント)などを早く始めた先行企業が有利になる仕組みを導入する方向で検討を進めている。後発企業にとって参入障壁となりかねず、応募を見送る動きが相次ぐ可能性がある。新たな仕組みが“競争制限”につながれば、発電コストの削減が進まない恐れもある。

オランダの大規模な洋上風力発電施設(ウインドファーム)(写真:資源エネルギー庁)
オランダの大規模な洋上風力発電施設(ウインドファーム)(写真:資源エネルギー庁)
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 洋上風力の公募では、「供給価格」と「事業実現性」に120点ずつ配分し、計240点満点で採点する。秋田県沖と千葉県沖の計3海域の公募では2021年12月、いずれも他を圧倒する安い価格を提示した三菱商事グループを事業者に選定した。業界や政界の反発が広がる中、発電施設の運転開始時期について、他の企業グループが三菱商事グループよりも早い時期を提案していたことが判明。早期稼働を重視するよう公募ルールの見直しを求める声が強まった。

 経済産業省と国土交通省は22年3月、有識者会議で公募ルールの見直しに着手。5月に開いた会合で見直し案を示し、3海域の公募に応じた企業などから意見を聞いた。両省の見直し案では、事業実現性に関する評価項目として「事業計画の迅速性」(20点)を新たに設け、運転開始時期を審査する。従来は、事業実現性に関する9評価項目のうち、「事業計画の実現性」(20点)の10評価項目の1つとして、運転開始時期をみていた。

「事業実現性」の評価項目と配点の見直し案(右)。左側の「秋田2海域・千葉1海域公募」が従来の評価項目と配点(資料:経済産業省、国土交通省)
「事業実現性」の評価項目と配点の見直し案(右)。左側の「秋田2海域・千葉1海域公募」が従来の評価項目と配点(資料:経済産業省、国土交通省)
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 さらに、両省は6月23日の会合で、事業計画の迅速性に関する具体的な評価方法を提案。評価点については、資金・収支計画など「事業計画の基盤面」(20点)と施工計画など「事業計画の実行面」(20点)で得た点数の合計が、基準の5割未満の場合はゼロに、5割以上の場合は運転開始時期に応じた点数に「評価点比率」を乗じた値とする。

 基準は(1)基盤面と実行面の配点(計40点)(2)両方の得点の合計が最も高い応募者の点数(最高評価点)のいずれかで、評価点比率はその基準に対する比率。運転開始時期に応じた点数は、事業者選定日から8年目を基準点として、運転開始予定日がその前なら5点、1年以上前なら10点、2年以上前なら15点、3年以上前なら20点を付ける。

事業計画の迅速性に関する評価点比率の算定方法案(資料:経済産業省、国土交通省)
事業計画の迅速性に関する評価点比率の算定方法案(資料:経済産業省、国土交通省)
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事業計画の迅速性に関する評価点の算定方法案(資料:経済産業省、国土交通省)
事業計画の迅速性に関する評価点の算定方法案(資料:経済産業省、国土交通省)
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 6月23日の会合では、両省が評価点比率の算定方法として示した2つの案のうち、応募者にとって予見可能性が高いなどの理由で前者の配点案を推す意見が目立った。ただし、これまでの会合と同様に、事業計画の迅速性の評価に対する委員の見方は割れた。両省の提案に賛成する声がある一方、配点が過大だとする指摘もあった。両省案に反対する委員は、これまで積み重ねてきた運用指針の考え方と矛盾する点を問題視した。

 現行の運用指針では、再エネ海域利用法に基づいて、洋上風力発電事業者による一般海域の占用期間を最大30年と定めている。環境アセス4~5年、建設2~3年、事業実施20年、撤去2年と、各作業期間に余裕を持たせて設定しているためだ。この内容は、両省が会合で示した運用指針の見直し案にも記されている。

 反対意見の委員によると、法律上も運用上も、事業の実施までに6~8年の期間を要することを前提としている。さらに、現行の運用指針を策定する際のパブリックコメント(意見公募)でも、応募者が事業者選定前に環境アセスを始める必要があるかとの質問に対して、両省はそうした必要性を想定していないと回答した。

 反対意見の委員は、「応募者に事業者選定前の準備を求めないことを前提に制度をつくってきたのに、今回の見直しで事業計画の迅速性の評価に20点を配分し、運転開始時期が早い計画ほど加点を大きくする仕組みを導入すれば、応募者が事業者選定前から動かなければならなくなり、これまでの制度設計の在り方と齟齬(そご)を来す」と主張する。