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 リニア中央新幹線のトンネル工事の本格着手を認めていない静岡県が、沿線の9都府県から成る「建設促進期成同盟会」に加入することが正式に決まった。ルートや開業時期など現行計画での建設促進に静岡県が同意したからだ。同盟会の会長を務める愛知県の大村秀章知事が2022年7月5日の会見で明らかにした。

リニア中央新幹線建設促進期成同盟会のリーフレットの一部(資料:リニア中央新幹線建設促進期成同盟会)
リニア中央新幹線建設促進期成同盟会のリーフレットの一部(資料:リニア中央新幹線建設促進期成同盟会)
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 静岡県は、県北部の山岳地帯を通るトンネルの工事を巡り、大井川流域の水資源や生態系への影響を理由に、県内の本格着工を認めてこなかった。さらに川勝平太知事は、事業主体のJR東海や監督官庁の国土交通省に県を迂回するルートへの変更を迫るかのような発言を繰り返してきた。

 同盟会に属する沿線9都府県では、静岡県が現行計画での建設促進に反対しているのではないかとの疑念が浮上。静岡県が3年前の中部圏知事会で加入を申請した際には、会員の意見がまとまらず、留保の扱いとなっていた。

 静岡県は22年6月2日の中部圏知事会で同盟会への加入を再申請した。しかし、申請書に静岡工区の建設促進の記載がなかったため、同盟会では静岡県の真意を疑う声が出た。直前の5月26日の自民党リニア特別委員会での川勝知事の発言も会員の警戒感を強めた。

 川勝知事は、沿線自治体の知事らが参加した非公開の自民党リニア特別委で、住民の理解が得られなければトンネル工事の中止とルートの変更を主張したとされる。リニア建設工事が進む沿線自治体の中には、現行計画が白紙に戻りかねないと懸念する向きもあった。

 このため、同盟会の会長を務める愛知県の大村知事は、静岡県に加入申請の意向を書面で確認する必要があると判断。他の会員都府県に文面案を諮った上で、次の2点を記した文書を静岡県に送付した。

 (1)現行ルートでの整備を前提にスピード感を持って静岡県内の課題解決に向けた取り組みを進めること(2)品川―名古屋間の27年度開業を、大阪までの37年度全線開業を目指すという立場を共有すること――。

 静岡県はいずれも同意するとの文書を返送した。6月29日付で返書を受け取った愛知県の大村知事は、静岡県の同盟会加入を認める方針を表明。他の会員都府県に書面で諾否を尋ね、7月5日までに全会員から静岡県の加入に賛成する回答を得た。

 愛知県の大村知事は7月5日の会見で、「リニアの早期開業に向けて、10都府県で同じ方向を向き、協力して取り組んでいきたい」と述べた。ただ、同盟会の思惑通りに事が運ぶか不透明だ。

 静岡県の川勝知事は6月29日の会見で、ルート変更の議論を先導しないと明言した。しかし川勝知事は、これまでも他の政治家らの発言を引用し、自ら先導しない形でルート変更に言及してきた。