全1261文字
PR

 中央自動車道の橋脚の耐震補強で、中日本高速道路会社が過去に施工した巻き立てなどの補強を反映していない設計図を基に施工者と契約を結んでいたことが分かった。施工履歴を設計者に正しく伝えていなかったのが原因だ。工事の続行が難しいと判明したため、施工者と結んだ契約を締結から約10カ月後の2022年6月17日に解除した。

既設の橋脚を巻き立て補強するはずだった(左)。しかし、施工者が現地を確認すると橋脚が右の写真のように既に巻き立て補強され、設計図と異なっていた(資料:中日本高速道路会社)
既設の橋脚を巻き立て補強するはずだった(左)。しかし、施工者が現地を確認すると橋脚が右の写真のように既に巻き立て補強され、設計図と異なっていた(資料:中日本高速道路会社)
[画像のクリックで拡大表示]

 問題があったのは、八王子インターチェンジ付近に架かる楢原高架橋など4橋の耐震補強工事。中日本高速八王子支社が21年8月にテクノス(愛知県豊川市)と12億7600万円(税込み)で契約。24年2月までの工期で、鉄筋コンクリート(RC)や炭素繊維によるRC橋脚の巻き立て、落橋防止装置や変位制限装置の設置、支承の交換を実施する予定だった。

 ところが、テクノスが21年12月に現地を確認すると、橋脚の様子が設計図と異なっていた。新たに巻き立て補強するはずの橋脚21基のうち4基で、既に巻き立てが完了していた。一部の橋脚では天端が拡幅されていたため、設置を予定していた落橋防止装置と変位制限装置の計235基のうち、半数以上の146基が図面通りに施工できないと分かった。

 テクノスから報告を受けた中日本高速は対応を検討。不備がある設計図書を基にした契約は有効と言い難いと判断。さらに、図面や数量の修正に多大な時間を要することから22年2月、契約解除を施工者に打診した。その後の協議で、人や資機材の手配などに要した費用の賠償について合意に至ったため、契約を解除した。賠償額については「回答を差し控える」(中日本高速広報課)とした。

桁かかり長を確保するための橋脚天端の拡幅も施工済みだったが、設計図に反映されていなかった。落橋防止装置などを図面通りに設置できなかった(資料:中日本高速道路会社)
桁かかり長を確保するための橋脚天端の拡幅も施工済みだったが、設計図に反映されていなかった。落橋防止装置などを図面通りに設置できなかった(資料:中日本高速道路会社)
[画像のクリックで拡大表示]

 中日本高速は原因について「設計業務の受注者に設計条件を正しく示せなかった」と、社内体制の不備を挙げる。設計業務の発注前に実施した現地踏査の結果や、過去の耐震補強工事の図面などを設計者に伝えていなかった。職員が設計業務の発注段階で施工履歴を把握していたのかどうかについては明らかにしていない。

 中日本高速が発注する橋の設計では、担当支社が個別に監督体制を決めている。問題があった耐震設計の業務には、専門性が高い構造技術課の職員を配置していなかった。