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 日本工営の都市空間事業部門と玉野総合コンサルタント(名古屋市)が2022年7月1日に統合し、日本工営都市空間(名古屋市)として新たにスタートを切った。インフラの老朽化や人口減少・高齢化など多くの課題を抱える地方都市で、これからの街づくりにどう取り組むのか。日本工営都市空間の社長に就いた吉田典明氏に戦略と展望を聞いた。(聞き手は橋本 剛志=日経クロステック/日経コンストラクション)

日本工営都市空間の吉田典明社長。1980年に日本工営に入社。インフラの維持管理分野に長く携わる。2014年に同社執行役員。都市空間事業部長などを経て、21年常務執行役員。22年7月より日本工営都市空間社長(写真:日経クロステック)
日本工営都市空間の吉田典明社長。1980年に日本工営に入社。インフラの維持管理分野に長く携わる。2014年に同社執行役員。都市空間事業部長などを経て、21年常務執行役員。22年7月より日本工営都市空間社長(写真:日経クロステック)
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新会社を通じて、街づくりのどのような分野に注力しますか。

 街づくりにおける防災・減災の実現や脱炭素の視点がこれまでになく重要となっています。人口減少や高齢化が進む中、地方では持続可能なコンパクトな街の実現や、交通ネットワークがつながる生活サービス拠点の形成が求められています。例えば、自動運転などの新しい技術をどのように交通サービスや物流に取り入れていくかが問われています。

 日本工営の旧都市空間事業は、地域全体の将来像を企画・提案する実績を積んできました。多様な技術を取りまとめ、自治体などへの提案に生かしたい。さらに当社は、日本工営グループ各社の連携をコーディネートする役目も担います。例えば日本工営のエネルギー事業統括本部と連携することで、地産地消の再生可能エネルギーを地域のエネルギー構想に組み入れたり、災害時の電力確保などエネルギーマネジメントシステムを構築したりします。

 旧玉野総合コンサルタントは、街づくりの実務に欠かせない人材と知見を抱えています。複数の地権者の合意を得ながら土地の形状を整えていく「土地区画整理事業」や測量・計測などの実績は中部地方最大手の建設コンサルタント会社として豊富です。顧客の8割を自治体が占めており、深い信頼関係を築いています。

 新会社の発足前から、旧玉野総合コンサルタントは事業運営に関わる会計や品質管理などの基幹システムを日本工営の全社システムに統合しています。22年から23年にかけて、人事制度や賃金制度の統合を進めます。

 新会社の下、従来はグループの傘下でプロジェクトベースでのつながりしかなかった組織が1つになります。今後、広域の構想から実務まで街づくりを一気通貫で提案できる人材を育てていきます。建築分野の人材は約40人在籍しており、さらに増やします。

現代の都市には老朽インフラを巡る重い課題もあります。

 人口減少が進む社会で、今あるインフラを全て永久に維持するのは現実的に無理です。インフラの統合や廃止が不可欠ですが、統廃合には住民の反発が大きいです。

 統廃合の意義を住民に理解・納得してもらうためには丁寧な説明が重要です。そのために、仮想空間上に現実空間を再現し、リアルなシミュレーションを実現する「デジタルツイン」技術を積極的に活用します。具現化に向けて既に複数の検討チームを立ち上げています。

 デジタルツインを使えば、例えば地震発生時に想定される被害状況や避難方法を人や車の動きを踏まえながら提案できます。街の将来像をきちんと見せることが重要です。納税者である住民への説明責任を果たす上でも欠かせません。

 もちろん、街づくりに関係する多くの市民の声を聞いていきます。当社が得意とするPark-PFI(公募設置管理制度)事業で携わる公園でワークショップなどを開き、コミュニケーションの場を設けていきます。

デジタルツインをはじめ街づくりの分野には、自動車や通信など他の業界も関心を寄せています。

 日本工営グループはこれまでの業務を通じて、高台や防波堤といった土木インフラを造ってきた実績があるので、実現性に踏み込んだ提案ができます。もちろん、自社に足りない視点や技術も多いです。異業種とも積極的に連携を模索します。