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 再エネ海域利用法に基づく洋上風力発電事業で、政府は事業者選定ルールを変更し、複数海域で同時に公募する際の参加者の受注件数を制限する「落札制限」を導入する。経済産業省と国土交通省が2022年7月14日に始めたパブリックコメント(意見公募)で、落札制限を盛り込んだ変更案を提示した。

 変更案では、多数の企業に参入機会を与える観点から、国内洋上風力発電産業の黎明(れいめい)期にだけ落札制限を実施すると明記。海域数や発電施設の出力規模を踏まえ、公募ごとに落札制限の実施の有無を検討すると規定した。

公募ルールの新旧対照表の一部。左側が落札制限に関する変更案の内容(資料:経済産業省、国土交通省)
公募ルールの新旧対照表の一部。左側が落札制限に関する変更案の内容(資料:経済産業省、国土交通省)
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 落札制限を巡っては、企業や識者の間で賛否が分かれている。公募ルールの見直しを検討してきた両省の有識者会議の合同会合でも、委員の意見が割れ、最終的に「トップ一任」で変更案をまとめた。

 変更案では、落札制限の実施を黎明期に限定することで、「競争環境をゆがめる」といった反対意見への配慮をみせる。一方で、黎明期の期間を明示せず、反対意見を実質的に骨抜きにできる狡猾(こうかつ)さも示している。両省の変更案を検討した22年6月23日の有識者会議の会合では、委員から次のような意見が出た。

 「落札制限をするのなら、とりあえず2年間を黎明期と定めるなど、いつまで実施するのか、はっきりとした時期を明記し、事業の透明性を示す文面に変えてもらいたい」

 変更案では結局、委員の要望を退け、落札制限に関して国に自由裁量を与えている。文面上は、経産省と国交省が黎明期と認める間は落札制限を続けられる。6月23日の有識者会議の会合では、事業の予見性の観点から落札制限に対する厳しい見方が相次いだ。

 「近い将来のラウンド(複数海域の公募)ですら、どの案件が出てくるか予見しにくい。各ラウンドが必ずしも非常に大規模で選択肢が多いわけではない環境の中で、こういった(落札)制限を掛けるのが望ましいか疑問の余地がある」

 「この先のスケジュールが明確になっていかないと、事業者ごとに相当悩むのではないか。もし(落札制限を)導入するのであれば、適切なスケジュールを早めに見せる形で実施していかないと、かなり難しいのではないか」

 この日の会合に出席した委員は9人。経産省の有識者会議の座長と国交省の有識者会議の委員長を除く7人のうち、4人が落札制限に注文を付けた。最も強硬な委員は、「落札制限ありきで話が進んでいるのはおかしい。1回目のラウンドで、価格点で差を付けた事業者が3カ所を落札したことをもって制度を導入するのは反対だ」と批判した。

 この委員が挙げた1回目のラウンドとは、秋田県沖と千葉県沖の計3海域を対象とした公募を指す。経産省と国交省は21年12月、いずれの海域でも他を圧倒する安い価格を提示した三菱商事グループを事業者に選定した。

 しかし、三菱商事グループの3海域独占に、業界や政界が反発。1者による複数海域の総取りを阻止するルール変更を求める声が強まった。両省は22年3月、各省に設けた有識者会議の合同会合を開催。次のような検討の方向性を示し、公募ルールの見直しに着手した。その文面には早くも、4カ月後の変更案を彷彿(ほうふつ)とさせる文言が並んでいる。

 「国内の洋上風力産業の黎明期の現段階において、多様な産業形成を促進する観点から、複数区域の事業者選定公募を同時に実施する場合の同一事業者による落札区域数の制限の在り方について検討してはどうか」

秋田県沖と千葉県沖の計3海域の公募結果(資料:経済産業省、国土交通省)
秋田県沖と千葉県沖の計3海域の公募結果(資料:経済産業省、国土交通省)
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