事業で稼いだ利益で借入金の利息を払えない「ゾンビ企業」が増えている。新型コロナウイルスの感染拡大が始まった2020年度は約16万5000社で、前年度を1割ほど上回った。ゾンビ企業のうち、建設業は最多の3割強を占める。コロナ禍の政府支援で延命している可能性がある。帝国データバンクが22年7月27日に発表した調査結果で明らかになった。
帝国データによると、ゾンビ企業には様々な解釈がある。債務不履行や債務超過の状態で営業を続けている企業の他、銀行融資の返済条件を変更する企業、過剰債務を抱える企業、生産性の低い企業、雇用を確保できない企業を指すこともある。
そこで帝国データは、ゾンビ企業について、「3年以上にわたってインタレスト・カバレッジ・レシオ(ICR)が1未満で、かつ設立10年以上」という国際決済銀行(BIS)の定義を採用。自社の企業財務データベースを使って、ゾンビ企業の実態を分析した。
ICRとは、企業の財務の健全性を評価する指標だ。事業利益(営業利益+受取利息+受取配当金)を金利負担(支払利息+割引料)で除して算出する。一般的に、この比率(倍率)が大きいほど、金利負担能力が高く、財務に余裕があるとされる。
ICRが1未満の場合、金利負担が事業利益よりも大きく、通常の企業活動で得た利益だけでは利払い費を賄えない状態を示す。BISはこうした不健全な財務状態が3年以上続いている企業をゾンビ企業と見なした。
帝国データの企業財務データベースによると、3年連続でICRを算出できる設立10年以上の企業は、20年度に10万6918社。このうち、3年連続でICRが1未満の企業は1万2037社で、全体の11.3%を占める。つまり、10社に1社がゾンビ企業に当たる。
このゾンビ企業1万2037社について、企業の規模別にみると、従業員数20人以下が7割近くに達した。業種別では、建設業(34.3%)、製造業(20%)、卸売業(18.9%)、サービス業(10.4%)の順に多かった。
業種別トップの建設業では、ゾンビ企業が4100社余りに上る。内訳は、鉄骨・鉄筋工事など「職別工事」が13.9%、一般土木建築工事など「総合工事」が12.6%、電気工事や管工事など「設備工事」が7.8%だった。