公共事業のコスト削減や業務効率化などを目的に、国土交通省が旗を振る「新技術の活用」が進んでいない。
国交省や自治体が発注した橋梁やトンネルなど道路施設の点検・修繕業務で、新技術の活用を検討したのは全体の6割弱にとどまる。国交省が運用する「新技術情報提供システム(NETIS)」を日常的に活用している自治体も5割に満たない。
財務省が2022年7月26日に公表した予算執行調査で明らかになった。財務省は、「新技術の活用の是非についての検討を業者任せにするのではなく、発注者自らが検討を行うことが重要」と指摘している。
財務省が毎年度実施している予算執行調査は、各府省の予算執行の実態を調査して改善点を指摘し、予算の見直しや執行の効率化を促すもの。今回公表したのは、22年度の対象39件のうち、7月までに調査を終えた34件だ。
国交省分は7件で、全体の2割を占める。「道路メンテナンスにおける新技術などの活用」は、その1つだ。国交省は、自治体が実施する点検の他、点検結果を踏まえた修繕や更新、撤去に対して、「道路メンテナンス事業補助制度」に基づく財政支援を行っている。
ただ、自治体が実施する道路メンテナンス事業については、新技術の検討・活用が進んでいない実態を示すデータもある。国交省が20年度の道路メンテナンス年報に収録した調査結果は、その代表例だ。
国交省は、20年度に道路施設を点検した自治体を対象に、新技術の検討・活用状況を調査。報告のあった1257自治体のうち、活用を検討したのは399自治体で、全体の32%にとどまった。そのうち、実際に活用したのは79自治体で、全体の6%余りにすぎなかった。
そこで財務省は、公共事業における新技術活用の課題を探るため、国交省の98国道事務所と1788自治体が21年度に実施した道路施設の点検・修繕業務を調査。回答のあった9898業務について分析した。
調査の結果、新技術の活用を検討したのは5857業務で、全体の59%を占めた。5857業務については、「予算編成時」「業務発注前」「業務契約締結後」のいずれかの段階、または複数の段階で活用を検討しており、検討総数は6434件を数えた。
検討総数6434件のうち、実際に活用したのは1610件(25%)で、予算編成時に検討して予算に反映したのは237件(3.7%)にすぎなかった。6434件を検討主体別に見ると、発注者が自ら検討したのは1379件(21%)にとどまった。