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 国土交通省の建設工事受注動態統計調査の不正処理を巡り、国の基幹統計の品質向上を検討してきた総務省統計委員会は、各府省の統計部門の組織風土改革などを盛り込んだ再発防止策をまとめた。

 統計委が2022年8月10日、「公的統計の総合的な品質向上に向けて」と題する建議を公表した。統計委は、建議の取り組みについて、各府省に着実な実行を求めるとともに、政府全体としてロードマップ(工程表)の作成を要請している。

総務省統計委員会が2022年8月10日にまとめた「公的統計の総合的な品質向上に向けて」と題する建議の一部(資料:総務省)
総務省統計委員会が2022年8月10日にまとめた「公的統計の総合的な品質向上に向けて」と題する建議の一部(資料:総務省)
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国土交通省による建設工事受注動態統計調査の不正処理のイメージ(資料:国土交通省)
国土交通省による建設工事受注動態統計調査の不正処理のイメージ(資料:国土交通省)
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 国交省の建設受注統計は、国の基幹統計の1つで、建設業許可を持つ約1万2000社を対象に毎月実施している。国交省は、建設会社による調査票の提出が期限に間に合わなかった場合、都道府県に指示してデータを書き換え、遅れた月の分を提出された月の分に合算。一方で、提出されなかった月に計上した推計値を削除せずに残していたため、二重計上が生じた。

 統計委の建議では、国交省の統計不正で顕在化したリスクは、他の政府の統計調査とも共通する統計作成プロセスの一般的特性に根差していると指摘。その特性として、統計作成に対して多様な業務が複合し、多くの人が携わる「総合プロジェクト」になっている点を挙げ、次のように説明する。

 例えば、統計調査の企画や実施管理、結果公表は国の職員が担う一方で、調査票の配布や回収などは自治体が法定受託事務として実施したり、民間事業者が委託業務として行ったりする。プロセスの様々な箇所で様々な理由によって誤りが生じ得るのが実情で、誤りは完全には防ぎきれないことを前提に対応しなければならない。

 組織として、誤りは統計作成プロセスのどこでも生じ得るものだと自覚し、誤りが疑われるものを確認した段階から、社会や統計ユーザーを第一に考えて対処を始めることが重要だ。そのためには、誤りやその端緒の発見者が高く評価されるようにする。併せて、誤りを発見することや誤りの訂正・公表を速やかに行うことが社会や統計ユーザーのためになることを組織全体で認識する。

 こうした組織風土を定着させるには、幹部職員のリーダーシップが重要だ。必要な情報が率直かつ確実に幹部に上がる、上がってきた情報に基づいて幹部が的確に指示する、といった組織としての行動が確保されるよう、幹部がマネジメント能力の向上を図り、率先して風通しのよい職場づくりを進めることが不可欠だ――。

 建議はこのように指摘する一方で、各府省の統計部門の職員には、経験年数や知識にばらつきがある上に、日常業務に追われて研修受講や資格取得に取り組むことが困難な状況にあるという。22年6月から7月にかけて実施した各府省の基幹統計の点検・確認で、職員体制に対する責任者の意見を複数選択方式で尋ねたところ、回答した58統計の責任者の間では、「組織マネジメントの強化」(45件、77.6%)や「職員能力の向上」(43件、74.1%)などが目立った。

 国交省の統計不正では、業務量に比べて実施体制のバランスが取れていない状態が慢性的に生じていた。その状態は統計部門に所属する人員数だけの問題ではなかった。体調が万全でない職員や時間外労働が困難な職員ら、必ずしも十分に業務を遂行できない職員も配置されていたため、一部の職員に業務が集中した。背景には、人事政策における統計業務の軽視があったと指摘される。

 国交省の統計部門には、統計の審査を担う統計分析審査官が配置されていた。統計分析審査官とは、厚生労働省が19年1月に公表した毎月勤労統計の不正処理問題を踏まえ、19年7月に導入したポストで、内閣官房が各府省に派遣する。厚労省の統計不正を受け、総務省統計委が19年6月にまとめた建議「公的統計の総合的品質管理を目指して」で言及した。

 ただ、国交省の検証委員会が22年1月に公表した調査報告書では、同省に派遣された統計分析審査官について、「それまでに統計の業務に就いたこともなく、統計に関する専門的知識も皆無であった職員が、十分な研修を受けることもなく、係長相当の職位で派遣されたとしても、派遣先の上司に対して厳しく指摘することを期待すること自体、不可能を強いるものであろう」と指摘。「現段階で機能しているとは思われない」と断じている。

内閣官房が2022年7月にまとめた「統計分析審査官の現状と課題」の一部。19年7月26日~22年1月27日に各府省に常駐したことのある統計分析審査官64人の状況(資料:内閣官房)
内閣官房が2022年7月にまとめた「統計分析審査官の現状と課題」の一部。19年7月26日~22年1月27日に各府省に常駐したことのある統計分析審査官64人の状況(資料:内閣官房)
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内閣官房の「統計分析審査官の現状と課題」の一部(資料:内閣官房)
内閣官房の「統計分析審査官の現状と課題」の一部(資料:内閣官房)
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