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 東北地方で風力発電事業の中止が相次いでいる。関西電力が2022年7月29日に宮城県川崎町の計画を撤回。8月4日に日立造船が福島県昭和村などの計画を、8月10日にオリックスが宮城県石巻市などの計画を、それぞれ白紙に戻した。2年前にも、前田建設工業が山形県鶴岡市などの計画を取りやめている。

 風力発電の適地が多いとされる東北では、各地で多数の事業が計画されている。しかし、環境影響評価(アセスメント)の手続き中に、環境や景観への影響を懸念する地元の自治体や住民から反発を受けるケースが珍しくない。事業者がトラブルを避けるには、事業区域を慎重に選定し、地元の理解を得るための丁寧な取り組みをする必要がある。

日立造船は2022年8月4日に福島県昭和村などで計画した風力発電事業の中止を公表した。写真奥の山々に風車を設置する計画だった。昭和村が22年8月17日発行の広報誌に写真を掲載し、事業中止を伝えた(出所:福島県昭和村の資料を基に日経クロステックが加工)
日立造船は2022年8月4日に福島県昭和村などで計画した風力発電事業の中止を公表した。写真奥の山々に風車を設置する計画だった。昭和村が22年8月17日発行の広報誌に写真を掲載し、事業中止を伝えた(出所:福島県昭和村の資料を基に日経クロステックが加工)
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 関西電力が撤回したのは、宮城と山形の両県にまたがる蔵王連峰で計画した「川崎ウィンドファーム事業」だ。当初は最大出力9万6600kWで、高さ最大約180mの風車を最大23基設置する予定だった。

 関西電力が、環境アセスの第1段階に当たる計画段階環境配慮書を公表すると、宮城・山形両県の関係自治体などが一斉に反発。「蔵王山は古来より信仰の対象としてきた聖なる山」(佐藤孝弘山形市長)で、林立する風車が「お釜」と呼ばれる蔵王国定公園のカルデラ湖からの景観を阻害するといった反対意見が噴出した。

 「関西の会社が東北で事業を進めていくことに違和感がある」。当初こう漏らしていた宮城県の村井嘉浩知事も7月4日の会見で、「私も反対であることをはっきりと言いたい。関西電力がさらに進めるということであれば、国に対してもしっかりとものを申していきたい」と発言。関西電力の事業継続に「待った」をかけた。

 同様の問題は2年前にも起こっている。前田建設工業は20年9月、山形県の鶴岡市と庄内町で計画した「山形県鶴岡市風力発電事業」を中止した。計画では、高さ約180mの風車約40基(最大出力12万8000kW)を、山岳信仰の地として知られる出羽三山神社がある羽黒山の山頂付近に設置する予定だった。

 山形県の吉村美栄子知事は、前田建設工業が配慮書を公表した20年8月の会見で、「出羽三山は、山形県のみならず、東日本随一の精神文化を擁するところだ。山形県の宝でもあり、日本遺産になっている。日本の宝だ。(風力発電は)あり得ない」と、計画に異を唱えた。

前田建設工業の「山形県鶴岡市風力発電事業」に反対した団体が、同社の計画段階環境配慮書を基に作成した風車完成イメージ(出所:出羽三山の風車建設に反対する会)
前田建設工業の「山形県鶴岡市風力発電事業」に反対した団体が、同社の計画段階環境配慮書を基に作成した風車完成イメージ(出所:出羽三山の風車建設に反対する会)
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