「橋の方から金属同士がぶつかるようなカーンという音が15~20分おきに聞こえてくる」
2021年8月、牛深ハイヤ大橋(熊本県天草市)の北端付近にある天草市牛深支所の職員から、橋を管理する県にこんな通報があった。音が聞こえるというP6橋脚上を確認すると、ローラー支承の破損が判明。他の橋脚の支承でも、ローラーを挟む支圧板が砕けていたり、ローラー脇にあるピニオン(歯車)の取り付け軸が破断したりしていた。
牛深ハイヤ大橋は、下島の南端にある牛深港に架かる臨港連絡橋だ。大きな弧を描く本線部と、その途中で下須島に連絡するループ部から成る。本線部のうち、延長883mの海上部で支承が破損した。
海上部は7径間連続鋼床版曲線箱桁橋で、1997年に完成した。熊本アートポリス事業の一環として、世界的な建築家のレンゾ・ピアノ氏が設計。当時の大手建設コンサルタント会社だったマエダ(99年に倒産)も設計者に名を連ねている。
牛深ハイヤ大橋は、優れたデザインが評価され、98年に土木学会田中賞やくまもと景観賞を受賞した。
熊本県のホームページでは、「風除板と底面の曲線により、橋桁5mの高さは3分割され連続する光と影のリズムの形象となって、薄く細やかで表現豊かな曲線として海上の19mの空を横切る」と紹介している。
ところが、その独特な線形や形状が災いした。FEM解析の結果、想定外の力が支承にかかっていたことが判明したのだ。
県は専門家による技術検討委員会(委員長:松村政秀・熊本大学くまもと水循環・減災研究教育センター教授)を設置。損傷原因の究明や恒久対策の検討を進めてきた。2022年7月12日に開いた第2回会合で、これまでの調査や解析の結果を報告した。