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 リニア中央新幹線の岐阜県内のトンネル工事で、廃棄物処理法が禁じる建設発生土(残土)へのコンクリートの混入が相次いでいる。約1年前の日吉トンネル工事(瑞浪市)に続き、新たに第一中京圏トンネル工事(多治見市)で発生した。

 県は、第一中京圏トンネル工事の施工者の佐藤工業・大豊建設・鈴中工業JVに、2022年9月22日までに原因と改善策を報告するよう要請。併せて、発注者のJR東海に、再発を防げなかった原因と今後の対応策を同26日までに報告するよう求めた。

リニア中央新幹線第一中京圏トンネル工事の問題に関して、岐阜県が2022年9月9日に公表した資料の一部(出所:岐阜県の資料を基に日経クロステックが加工)
リニア中央新幹線第一中京圏トンネル工事の問題に関して、岐阜県が2022年9月9日に公表した資料の一部(出所:岐阜県の資料を基に日経クロステックが加工)
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 新たに問題が見つかったのは、第一中京圏トンネル工事の大針工区。多治見市の大針町と北小木町に、延長約5kmの本線トンネルと、約1kmの非常口トンネル(斜坑)を19年3月~26年6月の工期で建設する。

 残土は、県の「埋立て等の規制に関する条例」に基づき、特定の処分場に搬入する。大針工区では、工事現場から数百m離れた処分場にベルトコンベヤーで搬出する。持ち込まれた残土は、民間事業の埋め立てなどに使用する。

 問題が発覚したのは、県が処分場への立ち入り検査を実施した22年9月1日。ベルトコンベヤーの排出口の近くに堆積した残土の中に、産業廃棄物のコンクリートがら十数個を発見した。大きさは、こぶし大から約20cm四方のものまであった。

 県の処分場への立ち入りは、定期検査の一環。定期検査は通常、1~2カ月に1回程度のペースで実施する。ただし、リニア工事のように残土が大量に発生する場合は、その頻度を1週間に1回程度に縮める。今回は、その初回の立ち入り検査だった。

 県は、22年8月下旬に処分場への残土の搬入が始まったとの情報を入手。定期検査の「頻度アップ」のルールに基づき、県の担当者が1週間ほど後の9月1日に処分場を訪ねた。処分場では、ダンプトラック2台分程度(約10m3)の残土が山積みになっていた。

 県の担当者が残土の山に近づくと、目につく場所に異物があった。表面に泥が付着していたので、残土に混じっていた周囲の石と判別しにくかったが、コンクリートがらであることは間違いなかった。

 4日後の9月5日、大針工区の施工ヤードと処分場への立ち入り検査を実施。施工ヤードで、処分場にあったコンクリートがらと同じ性状のものを確認した。両地点がベルトコンベヤーでつながっていることも踏まえ、コンクリートがらの発生源を大針工区と断定した。

 施工ヤードで佐藤工業JVに事情を尋ねると、残土に混入したのは吹き付けコンクリートの一部で、搬出時の分別が徹底できていなかった可能性があるとの回答だった。トンネル工事では、鏡(掘削面)にコンクリートを吹き付けて掘り進めるNATM工法を採用している。

 県内のリニア工事では、同様の問題が他工区でも起こっている。1年ほど前の21年10月、瑞浪市内の日吉トンネル工事の南垣外(みなみがいと)工区から搬出した残土でもコンクリート片の混入が判明した。