岐阜県高山市の山岳道路「乗鞍スカイライン」が災害復旧後の全面開通を翌日に控えて再び崩れた問題で、垂直擁壁や補強土壁が基礎ごとずり落ちていたことが分かった。道路を管理する県が2022年9月22日、専門家らでつくる対策検討会(委員長:沢田和秀・岐阜大学工学部付属インフラマネジメント技術研究センター教授)の初会合で崩落の詳細を明らかにした。
現場は、20年7月の豪雨で被災し、復旧を終えた箇所だ。仮復旧の状態で21年7月から山側の1車線を使って片側交互通行を続けていた。対面通行に移行する予定日前日の22年9月9日に谷側が再び崩れた。
委員長の沢田教授は会合後の会見で、「現場では冬にたくさんの雪が降り、今年も毎日のように雨が降っている。こうした状況が影響したのではないか」と語った。ただし、現場では崩落前日の夜から雨が降っていたものの、交通規制するほどの大雨ではなかった。
20年7月に被災した箇所の復旧工事は、大きく3つのステップで進めた。ステップ1として、崩落した法面をコンクリート吹き付けと鉄筋挿入で保護。ステップ2で、山側を切り土して1車線分の道幅を確保した後、片側交互通行を開始した。その後、ステップ3で谷側を垂直擁壁または補強土壁によって盛り土し、道幅を広げた。
盛り土した延長45mの区間のうち、谷側壁面からの施工範囲の奥行きが長い南側26mは「テールアルメ工法」の補強土壁を採用。北側19mは、補強土壁に必要な奥行きに満たないため垂直擁壁「ポラメッシュ」とした。いずれも壁面は垂直で、その下にコンクリート造の擁壁基礎を設けている。擁壁などがずり落ちないよう、基礎の下には「SPフィックスパイル」を用いた圧縮補強土工を施していた。
22年9月9日の崩落後の写真を見ると、垂直擁壁を採用した北側の方が激しく崩壊している。南側ではステップ1の法面保護工と盛り土の境目が滑り面になっているのに対し、北側では20年7月に崩れなかった地山を含めて、法面保護工と共に崩落した。まず北側の地山の部分で崩壊が起こり、南側へと広がった可能性が高い。
地山の排水対策として、法面保護工の背面に透水シートを設置し、擁壁基礎内を横断する水抜きパイプを通じて谷側に排水していた。垂直擁壁では、中詰めに砕石を使用して水を通過させ、無数の隙間を持つポーラスコンクリートの壁面全体で排水。補強土壁では、コンクリートパネルの壁面の裏側と擁壁基礎上の底面に砕石による排水層を設け、水抜き穴から排水していた。