JFEスチールと日本製鉄、五洋建設、東亜建設工業、日本海工(神戸市)は共同で、軟弱な海底地盤の表層を原位置で改良する「カルシア改質土のバッチ式原位置混合工法」を開発した。鉄鋼スラグが原料のカルシア改質材と海底地盤の粘土などとを混合する「カルシア改質土」の施工を、密閉式バケットによって海底で完結する。2022年7月から2カ月間、広島港沖で実証実験を実施し、新工法の施工能力が従来工法と同等であることを確認した。
開発した工法では、サンドコンパクションパイル(SCP)船のケーシング機器を改良した「バケット装置」を用いる。施工フローは次の通りだ。(1)バケット装置を海底に投入する(2)着床後に装置先端を閉じて密閉し、装置内に海底地盤の粘土を取り込む(3)改質材を投入して粘土と混合する(4)製造した改質土を地盤に排出して装置を引き上げる。
海底地盤におけるカルシア改質土の従来工法は、混合と投入という2段階のプロセスを踏むのが一般的だった。最も適用実績の多い「バックホウ混合工法」では、海上の台船で改質材と浚渫(しゅんせつ)土を混合して改質土を製造したうえで、改良対象の地盤上に投入する。表層よりも深い位置に改質土を構築するには、事前に地盤を掘削するなど複雑な工程が必要だった。
「新工法の最大のメリットは、海底地盤の粘土を元の位置から移動せずに、その場で地盤を改良できることだ」。JFEスチール・スチール研究所インフラ建材研究部の粟津進吾主任研究員は、こう話す。バケットを地盤に貫入することで、表層よりも深い位置でのカルシア改質土の構築も可能となり、適用範囲が広がった。
具体的な用途としては、洋上風力発電の基礎周辺をはじめとした洗堀防止などだ。従来工法だと、対象地盤の上部にカルシア改質土を敷設するので、施工箇所の水深が数m程度浅くなった。浅い海で施工した場合、船舶の下部と改質土が接触し、船舶の運航・停泊に支障を来す恐れがあった。