パシフィックコンサルタンツの重永智之前社長が富山市の官製談合事件で引責辞任したことを受け、専務だった大本修氏が2022年10月1日、新社長に就任した。市が発注した橋梁設計業務などのプロポーザルを巡る不正で、同社イノベーション事業本部総合プロジェクト部副部長(肩書は当時、以下同じ)が有罪判決を受けたことに伴う人事だ。
副部長の他、同社とJVを組んでいたGK設計(東京・豊島)の都市環境デザイン部シニアディレクターと関西事務所所長、プロポーザルの選考委員を務めていた富山市建設部次長の計4人が、22年6月29日までに懲役10月~1年6月、執行猶予3年の判決を受けた。いずれも控訴せず、刑が確定している。
事件の舞台となったのは、市が公募型プロポーザル方式で契約先を決めた「呉羽丘陵フットパス橋梁(呉羽山・城山連絡橋)設計等業務委託」(以下、橋梁設計業務)と「呉羽丘陵フットパス連絡橋周辺広場整備基本計画策定等業務委託」(以下、広場計画業務)の2件。選考委員は2件とも、当時の副市長、建設部長、建設技術統括監、建設部次長、活力都市創造部次長、商工労働部次長の6人が務めた。
富山市は前者のプロポーザルを19年4月に公告し、4者が参加(うち1者辞退)。パシコン・GK設計JVを特定し、約6000万円で随意契約を結んだ。後者のプロポーザルは19年6月に公告。参加者4者の中から特定した同JVと約1200万円で契約した。
裁判資料などによると、パシコンの副部長らと結託した市の建設部次長が、プロポーザルの参加要件を恣意的に緩和させたり、競合他社を蹴落としたりしていた。このような“えげつない”不正を許した背景には、市のプロポーザル方式の抱える不透明性がある。
事件の経緯は以下の通りだ。
官製談合を主導したのは市の建設部次長。以前から市の業務で付き合いのあったGK設計に受注させようと、橋梁の設計業務で実績のあるパシコンとJVを組ませたとみられる。
まず19年4月、橋梁設計業務のプロポーザルの公告に先立って、建設部次長がGK設計のシニアディレクターに選考委員名簿などを渡した。さらに、GK設計の関西事務所所長やパシコンの副部長にも、評価項目の配点や評価ポイントなどを教示した。